環境

大気汚染防止・廃棄物削減

方針・戦略

基本的な考え方

飯野海運グループでは、大気汚染・廃棄物の削減をマテリアリティ(サステナビリティ重要課題)の一つと位置づけ、中期経営計画「The Adventure to Our Sustainable Future」において、温室効果ガス(GHG)排出量削減目標を設定し、2050年までにカーボンニュートラルを達成するためのロードマップを策定するなど、サステナビリティへの取組みを進めています。

海運業では、大気汚染防止の観点のみならず気候変動への対応としてのGHG削減や、プラスチックゴミの削減に取組んでいます。
不動産業では、当社所有ビルにおいてテナントと協働して廃棄物削減に努めています。

取組み

大気汚染の防止

船舶の運航には、大気汚染や酸性雨の原因の一つとされている窒素酸化物(NOx)や硫黄酸化物(SOx)の排出を伴います。

当社グループでは、排ガス浄化装置(スクラバー)の導入や低硫黄燃料油の使用、NOx低減技術の排ガス再循環(EGR)や選択触媒還元脱硝装置(SCR)の運用・管理のほか、風力推進補助装置(ローターセイル)の導入を進めています。ローターセイルは、フレットナー・ローターの原理と現代の最新技術を融合したもので、船舶の甲板上に設置したローターセイルを船内電源によってモーターで回転させ、洋上の風力によるマグナス効果で船舶の推進力を生み出し、燃料消費量を削減することでCO2排出量と燃料費を削減します。2023年11月時点では、2隻の船舶に導入済みです。今後も燃費効率改善と環境負荷低減のための取組みを継続していきます。

データ集(NOx排出量、SOx排出量)PDF

次世代燃料船の採用

燃料燃焼時の硫黄酸化物(SOx)を大幅に削減する代替燃料として、メタノールやLPGも使用するディーゼル機関が実用化されています。

当社グループでは、メタノールを燃料として使用可能な二元燃料ディーゼル機関を搭載したケミカルタンカーが2019年12月に竣工し、運航および船舶管理を通じて、技術的知見および経験の積み重ねを進めています。

更なる環境負荷低減のため、LPGを燃料として使用可能な二元燃料ディーゼル機関を搭載した大型LPG船の1隻目が2022年2月、2隻目が2023年3月に竣工しました。

また、2024年2月には、世界的な船級協会である米国American Bureau of Shipping(ABS)によるアンモニア燃料船化の基礎認証を受けて設計・建造される世界初のアンモニア運搬船が竣工を予定しています。

メタノールおよびLPG二元燃料主機関搭載船より得られる技術的知見、経験は今後実用化が予想されるカーボンフリー燃料ディーゼル機関技術、運航管理に直結することが予想され、継続して技術的知見の習得を進めています。併せてその他低環境負荷燃料および動力源(原動機)に関する技術調査、検証も進めています。

ビルの空気環境測定

建築物における衛生的環境の確保に適する法律に基づき、空気環境の定期測定、飲料水の定期検査、水槽を含めた建物の定期清掃などを実施し、ビルの安全衛生の維持を図っています。

データ集(不動産業における空気環境測定)PDF

廃棄物の削減

当社グループの国内保有ビルでは、廃棄物再利用率の目標値を廃棄物全体の72.4%※1と定め、省資源に取組むことで廃棄物の削減に努めています。2022年度の廃棄物の再生率は、コロナ禍の間に比べて排出量が増えた一方、再生できる紙類の排出が減少したため、70%と目標値を下回りました。また、当社の主要賃貸ビルでは、東京23区の「廃棄物の処理及び再利用に関する条例」に基づき、「事業用大規模建築物における再利用計画書」を作成・提出しています。飯野ビルディング・汐留芝離宮ビルディングなど、各ビルに廃棄物計量機を整備し、廃棄物の重量を自社で正確に計量・記録しています。これにより排出量の傾向と課題の把握が可能になり、排出の抑制と処理費用の低減に役立っています。

2022年度のコピー用紙使用量※2は、在宅勤務の増加に加え、ミックスペーパーやコピー用紙のリサイクル等により、895千枚と前年度比で70%に減少しています。

※1
東京都千代田区の廃棄物再利用率(直近で最も数値が高い2014年度)を当社目標値に採用
※2
集計範囲は、飯野ビルとNS虎ノ門ビル

データ集(当社グループオフィスのコピー用紙使用量)PDF

データ集(廃棄物排出量と再生率)PDF

リサイクル率向上への取組み

当社グループでは、テナントの皆様と協力してゴミの分別を推進しており、高い再生率を維持しています。

飯野ビルディングにおいて排出される生ごみ(残飯・調理くず)や廃食用油のリサイクルをテナントと協働して取組んでいます。生ごみに異物や不純物が含まれていると飼料として利用できないため、分別をテナントに要請し協力を得ています。分別された生ごみは飼料化施設に運搬され、そこで乾燥処理することにより家畜用の配合飼料原料にリサイクルされます。

2022年度は回収した58.7トンの生ごみを家畜用飼料へリサイクルしました。廃食用油は、そのまま焼却処分するとCO2が発生するなど環境への負荷が大きいですが、精製しバイオディーゼル燃料(BDF)とすることでカーボンニュートラルの燃料として利用することができます。

飯野ビルディングでは、年間6.5トン排出される廃食料油の全量をバイオディーゼル燃料に精製しています。

船上での廃棄物

船舶内では、船員の生活に伴いさまざまな生活系廃棄物が発生します。当社グループでは、これらの廃棄物を「MARPOL73/78条約」に基づき適正に処理し、海洋環境の保全に努めています。

廃棄物は分別収集され、焼却処理、海洋投棄、または陸上受入施設へ移送します。特に、船内で発生する飲料水のペットボトルごみについては、2021年以降当社所有船舶にミネラルウォーター製造装置の設置を進めています。大型原油タンカー3隻において、ペットボトルごみの十分な削減効果が確認されただけでなく、ペットボトルの積み込みや保管にかかる作業負荷が低減し、労働環境の改善にもつながっています。

2023年度中に、新たに3隻の船舶に搭載することを決定しています。本装置を設置した船舶の乗組員には、当社グループのロゴ入りステンレス製ボトルを配布し、一丸となって廃棄物削減に取組んでいます。

集計期間は2022年1月~6月。1隻当たりのペットボトル(1.5L)の削減量は、1,300本/月程度と換算。

データ集(船上生活系廃棄物)PDF

他社と協働した廃棄物削減と資源循環型経済に向けた取組み

当社グループの不動産業では、他社と協働で汚染・廃棄物の削減に取組んでいます。

他社・テナント協働での汚染・廃棄物削減事例

施策 設置場所 設置目的 具体的な取組み
PETボトル自動回収機とPETボトルリサイクルボックスの設置 日比谷フォートタワー ビル共有者、テナント企業や来館者が一緒になりPETボトルの水平リサイクルを推進し、持続的な資源循環型経済の実現に向けた取組みを進めるため 環境負荷低減とリサイクル促進の観点からPETボトルの水平リサイクルを行うことを目的とした自動回収機を設置
使用済みPETボトルを回収・リサイクル処理した上でPETボトルとして再生し、飲料の容器として用いるリサイクル方法。新たな原料が不要なため、環境への負荷が小さい。