ガバナンスの強化
方針
基本的な考え方
当社は、持続的な成長と中長期的な企業価値の向上の基礎となる各ステークホルダーとの信頼関係の構築に向けた基本的な考え方を、グループ共通の企業理念として、「安全の確保を最優先に、人々の想いを繋ぎ、より豊かな未来を築きます」と掲げています。企業理念を実現するための経営方針・行動規範に加えて、当社グループ役職員の行動指針として、「安全の重視」「人権の尊重」「環境の保護」「社会への貢献」「コンプライアンスの徹底」「取引先の尊重」「ダイバーシティの推進」「情報開示とコミュニケーション」および「教育・訓練」の9項目からなるサステナビリティ基本方針を定め、それを実践することで環境・社会問題の解決に向けた企業活動に取組んでいます。
そのため、当社はコーポレート・ガバナンスによって、サステナビリティ基本方針を実践するために求められる経営の健全性、透明性および効率性を確保することが重要であると考えており、コーポレート・ガバナンスを「企業を構成するさまざまな主体(ステークホルダー)間の利害を調整し、効率的な企業活動を実現するための仕組み」と捉えています。
当社は、このような考え方に基づき、監査役制度を基礎とした組織体制のもと、コーポレート・ガバナンスを充実させ、経営の健全性、透明性および効率性との両立を図っています。
経営の意思決定および業務執行に際しては、株主、従業員およびその他のステークホルダーとの関係に配慮し、常に最良の経営成果をあげられるよう不断の努力を重ね、持続的な成長と中長期的な企業価値の向上に取組んでいます。
基本方針
- 株主の権利を実質的に確保するための適切な対応と株主がその権利を適切に行使できる環境の整備とを行うとともに、全ての株主の実質的な平等性の確保に配慮します。
- 株主、従業員、お客様、取引先、債権者及び地域社会をはじめとする様々なステークホルダーの権利・立場を尊重し、ステークホルダーとの適切な協働に努めます。
- 財務情報のみならず非財務情報についても適切な開示がなされるように主体的に取組み、分かりやすく有用性の高い情報開示と透明性の確保に努めます。
- 取締役会は、株主に対する受託者責任を踏まえ、持続的な成長と中長期的な企業価値の向上を図るため、適切なリスクテイクを支える環境整備や取締役に対する実効性の高い監督等の役割・責務を適切に果たします。監査役及び監査役会は、株主に対する受託者責任を踏まえ、独立した客観的な立場から、取締役の職務の執行の監査等の役割・責務を適切に果たします。
- 持続的な成長と中長期的な企業価値の向上に資するため、株主との間で建設的な対話を行います。
コーポレート・ガバナンスに関する報告書(228 KB)
(東京証券取引所ホームページの適時開示情報提供サービスからもご覧いただけます)
体制
組織体制
組織体制
取締役会・経営執行協議会
重要事項の決議および取締役の職務執行・執行役員の業務執行の監督を行うために毎月1回定例取締役会を開催しています。さらに、取締役会から授権された事項の決議、取締役会から検討を指示された事項の審議ならびに経営に関する意見交換等を行うために執行役員で構成される経営執行協議会を毎週開催しています。
取締役会の構成
取締役会は、株主に対する受託者責任を踏まえ、持続的な成長と中長期的な企業価値の向上を図るため、適切なリスクテイクを支える環境整備や取締役に対する実効性の高い監督等の役割・責務を適切に果たすため、取締役会全体としての知識・経験・能力のバランスと多様性に十分配慮し、取締役8名(社外取締役4名、うち女性2名)で構成しています。
2022年6月の株主総会で定款の変更を行い、取締役の経営責任を明確にし、経営環境の変化に迅速に対応できる経営体制を構築するため取締役の任期を1年としています。
取締役は優れた人格、見識および能力と豊富な経験とを有し、その責務を適切に果たすことのできる者を選任しています。
また、社外取締役は、会社法に定める社外取締役の要件を満たし、かつ、建設的な意見を持ち、当社のより一層の成長に対する貢献が期待できる人物から選任しており、行政監督、外交官の経験や他社の役員経験者など高い専門性を有する人材を選任しています。
第132期 有価証券報告書 P44(PDF):役員の状況(3MB)
監査役会の構成
監査役会は、株主に対する受託者責任を踏まえ、独立した客観的な立場から、取締役の職務執行の監査等の役割・責務を適切に果たすため、財務・会計に関する適切な知見を有する者が含まれるよう配慮し、監査役4名(社外監査役2名)で構成されています。
監査役は優れた人格、見識および能力と豊富な経験とを有し、その責務を適切に果たすことのできる者を選任しています。
また、社外監査役は、会社法に定める社外監査役の要件を満たし、かつ、優れた人格、見識および能力と豊富な経験とを有し、その責務を適切に果たすことのできる者を選任しています。
監査会計の状況については、「有価証券報告書」をご覧ください。
第132期 有価証券報告書 P49(PDF):監査の状況(3MB)
役員のスキルマトリックス
中期経営計画における重点戦略および事業基盤戦略の推進にあたり、指名・報酬諮問委員会において、"取締役会が持つべきスキル(知識、経験、能力)"を議論し、下記8つのスキルを選定しました。
当社取締役および監査役のスキルを一覧化したスキルマトリックスは、下表をご参照ください。
スキルマトリックス
取締役・監査役 就任年 |
企業経営 | 事業戦略 ・ マーケティング |
財務・会計 | テクノロジー・ DX |
法務・リスク マネジメント |
人材・労務 | ESG経営 | グローバル 戦略 |
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取締役 | 大谷祐介 | 2020 | ● | ● | ● | ● | ● | ||||
岡田明彦 | 2012 | ● | ● | ● | ● | ||||||
小薗江隆一 | 2013 | ● | ● | ● | |||||||
鮒子田修 | 2023 | ● | ● | ● | |||||||
独立・社外 | 大江啓 | 2015 | ● | ● | |||||||
独立・社外 | 三好真理 | 2021 | ● | ● | |||||||
独立・社外 | 野々村智範 | 2023 | ● | ● | |||||||
独立・社外 | 髙橋静代 | 2023 | ● | ● | |||||||
監査役 | 橋村義憲 | 2016 | ● | ● | ● | ||||||
神宮知茂 | 2023 | ● | ● | ● | |||||||
独立・社外 | 山田義雄 | 2018 | ● | ● | |||||||
独立・社外 | 髙橋洋 | 2020 | ● | ● |
スキル選定理由・定義
企業経営 | 当社はグローバルに事業を展開しており、中期経営計画で掲げる重点戦略を実行し、経済的価値と社会的価値の両方の創造を実現し、企業理念の実現や企業の永続的発展を目指すために企業でのマネジメント経験を持つ役員が必要である。 |
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事業戦略・ マーケティング |
グローバルに事業を展開し、新規顧客開拓や多様化する顧客のニーズに的確に対応していくためには、戦略の立案やマーケティングを実行した経験やノウハウを持つ役員が必要である。 |
財務・会計 | 中期経営計画において事業ポートフォリオ経営の推進を掲げており、より資本コストを重視する経営を推進するために財務・会計に関する知識・経験を持つ役員が必要である。 |
テクノロジー・DX | 中期経営計画における事業基盤戦略でDXの推進を掲げており、経営基盤の強化やコスト競争力の強化、重点戦略実行のためにはITの活用が不可欠であり、IT/DXに関する知識・経験を持つ役員が必要である。 |
法務・リスク マネジメント |
当社はグローバルに事業を展開しており、国内外の法制度・各種規制の知識・経験を持ち、リスクを適切に評価し、予防・対策をリードできる役員が必要である。 |
人材・労務 | 多様な人材の確保など、人材戦略の実行による従業員エンゲージメントの向上を通して企業価値を最大化するために、人事・労務(または人材開発)に関する知識・経験を持つ役員が必要である。 |
ESG経営 | 当社は環境や人権への対応、ガバナンスの強化等をマテリアリティとして特定、また中期経営計画においても社会的価値の創造を重点戦略および事業戦略基盤に掲げており、これらの分野における知識・経験を持つ役員が必要である。 |
グローバル 戦略 |
当社はグローバルに事業を展開しており、中期経営計画の重点戦略の一つであるグローバル事業の拡張を推進するためには、海外での勤務経験や海外の商習慣等の知識・経験を持つ役員が必要である。 |
指名・報酬諮問委員会
当社は、取締役会の任意の諮問機関として、取締役候補等の指名および取締役の報酬に関する手続き等の客観性・透明性・公正性を高め、取締役会の監督体制および説明責任を強化し、コーポレート・ガバナンス体制をさらに充実させることを目的として、2019年10月に指名・報酬諮問委員会を設置しました。同委員会のメンバーは社外取締役3名および代表取締役2名の計5名で構成され、委員長は社外取締役が務めています。同委員会は、取締役会の諮問に基づき、各事項について審議を行い、取締役会に対して答申を行っています。2022年度、同委員会は計11回開催されました。
執行役員執行体制について
当社は2016年6月28日以降、業務執行取締役による業務執行体制から、執行役員による業務執行体制に変更し、取締役会の重要事項に関する意思決定機能と業務執行の監督機能を強化することで、コーポレート・ガバナンスの一層の充実を図っています。
内部統制システム
当社は、監査役、経営監査室および会計監査人の相互の連携のもとにグループ全体の内部統制の強化に努めています。
監査役は当社グループの監査を適正に実施するため、会計監査人の独立性を監視しつつ会計監査人から会計監査の内容について説明を受けるとともに、会計監査人と情報交換を行うなど緊密に連携することで、各々の監査の質を高めています。
当社はコーポレート・ガバナンスおよび内部統制の強化を目的として2005年10月より内部監査室を設置し、2019年6月より経営監査室に名称を変更しています。
経営監査室は「内部監査規程」に基づき、当社グループ全体の業務執行の適正性の確保を目的として、当社監査役および会計監査人と連携して、当社グループのすべての業務を対象とする監査を、年次計画に沿って定期的に行っています。
また、監査役と経営監査室は原則として毎月1回の定例打合せを開催しているほか、常勤監査役は経営監査室と必要に応じて都度情報交換を行うことで各々の監査の品質向上を目指しています。
取組み
社外役員の独立性基準
社外取締役および社外監査役に求められる独立性および資質に関して以下の「社外役員の独立性および資質に関する基準」を定めています。
社外役員の独立性および資質に関する基準
本基準は、当社における社外取締役および社外監査役(あわせて以下「社外役員」)の候補者に関する独立性判断基準および候補者に求められる資質を定めるものとする。
社外監査役
社外監査役候補者には、会社法に定める社外監査役の要件を満たし、かつ、優れた人格、見識および能力と豊富な経験とを有し、その責務を適切に果たすことのできる者を指名し、財務・会計に関する適切な知見を有する者が含まれるよう配慮するものとする。
社外役員の独立性判断基準
当社は、社外役員又は社外役員候補者が、次の各項目のいずれにも該当しないと判断される場合に、独立性を有しているものと判断する。
- 当社又は当社子会社の業務執行者※1
- 当社を主要な取引先とする者※2又はその業務執行者
- 当社の主要な取引先※3又はその業務執行者
- 当社の現在の大株主(総議決権の10%以上の議決権を直接又は間接的に保有している者)又はその業務執行者
- 当社の会計監査人又はその社員等として当社の監査業務を担当している者
- 当社から役員報酬以外に、多額※4の金銭その他の財産上の利益を受けているコンサルタント又は会計、法律、税務その他の専門家。これらの者が法人、組合等の団体である場合は当該団体に所属する者を含む。
- 当社から多額※4の寄付又は助成を受けている者。これらの者が法人、組合等の団体である場合はその理事その他の業務執行者を含む。
- 当社の業務執行取締役、常勤監査役が他の会社の社外取締役又は社外監査役を兼任している場合において、当該他の会社の業務執行取締役、執行役又は執行役員である者
- 上記1~8に過去3年間において該当していた者※5
- 上記1~9に該当する者、又は、社外監査役の独立性を判断する場合については以下に掲げる者が重要な者※6である場合において、その者の配偶者又は二親等内の親族
- 当社の会計参与(当該会計参与が法人である場合は、その職務を行うべき社員を含む。以下同じ)
- 当社の子会社の業務執行者でない取締役又は会計参与
- 過去3年間において上記a、b又は当社の業務執行者でない取締役に該当していた者
- ※1
- 業務執行者とは、業務執行取締役、執行役、執行役員その他これらに準じる者および使用人をいう。
- ※2
- 当社を主要な取引先とする者とは、取引先の直近事業年度の年間連結売上高の2%以上の額の支払いを当社から受けた者をいう。
- ※3
- 当社の主要な取引先とは、直近事業年度における当社の年間連結売上高の2%以上の額の支払いを当社に行っている者又は直近事業年度末における当社の連結総資産の2%以上の額を当社に融資している者をいう。
- ※4
- 多額とは、直近事業年度において当社から受けた財産上の利益が個人の場合は年間1,000万円以上をいい、法人、組合等の団体の場合は、年間1,000万円以上でかつ、当該団体の直近事業年度の年間連結売上高又は総収入の2%以上の額をいう。
- ※5
- 前記4に関しては、過去3年間において、当社の現在の大株主の業務執行者であった者をいう。
- ※6
- 重要な者には、取締役(社外取締役を除く)、監査役(社外監査役を除く)、執行役員および部長以上の管理職にある使用人、監査法人に所属する公認会計士および法律事務所に所属する弁護士(いわゆるアソシエイトを含む)が含まれる。
取締役会の実効性評価
当社では、その持続的な成長と中長期的な企業価値の向上を図るべく、取締役会の機能を向上させることを目的として、取締役会の実効性につき、全取締役および監査役を対象として分析と評価を毎年実施しています。
2023年度の実施内容(2024年2月実施)
2023年度は、①取締役会の構成について、②取締役会の運営について、③取締役会の議論について、④取締役会のモニタリング機能について、⑤社内取締役のパフォーマンスについて、⑥取締役・監査役に対する支援体制について、⑦トレーニングについて、⑧株主(投資家)との対話について、⑨ご自身の取り組みについて、⑩総括の10大項目に関する61問のアンケートを実施しました。2023年度の実効性の評価結果は以下の通りです。
概要
当社の取締役会においては、取締役会は適正な構成・員数で運営されており実質的な審議が行えていること、取締役会の支援体制については資料や報告内容の改善や審議の深度化のための社外役員への付議案件の事前説明等も適切であることが確認され、また、社外取締役からは意思決定が適切に反映されているとの評価を得ており、2022年度に続き取締役会の実効性が確保されていると評価しております。
2022年度に認識した課題について
- DX対応
2023年度に策定した中期経営計画において「DXの推進加速」を事業基盤戦略の1つとして掲げ、スタートアップ企業とのコラボレーション等を進めていますが、更なる推進の必要性が認識されました。 - 取締役会多様性
取締役会多様性における更なる推進が課題となっておりましたが、女性取締役を2名に増員しさらなる改善が見られたものと認識しております。 - 役職員間のコミュニケーション改善
新型コロナ対応にて劣後していた取締役と一般社員間のコミュニケーションについても、コロナ禍終息によりコミュニケーションの場を設定し、改善が図れたと認識しております。
2023年度に認識された課題
2023年度の課題として、取締役運営に関して、企業価値向上、PBR向上、人的資本を含めたサステナビリティ関連の対応も含め、長期ビジョン、将来のありたき姿や各事業戦略について取締役会において議論を深めてまいります。また、前年度からの課題たるDX活用も含め今後これらの課題を中心にモニタリング強化を行ってまいります。
当社取締役会では2023年度の実効性評価の結果を踏まえ、提起された課題について十分な検討を行い、取締役会の実効性のさらなる向上に向けた取り組みを進めてまいります。