サステナビリティ重要課題の特定

飯野海運グループのマテリアリティ

海運業と不動産業を巡る外部環境は大きく変化しており、社会・ステークホルダーにとって重要な社会的課題は日々変化しています。
当社グループでは、地域社会や環境に大きな影響を与える油濁等の事故や、テナントおよび工事関係者の事故予防への対応として「安全・安心の確保」、気候変動や温室効果ガス(GHG)削減への対応として「脱炭素社会へ向けた取組み」、生態系の保全や汚染防止への対応として「生物多様性への取組み」をマテリアリティ(サステナビリティ重要課題)としています。
加えて、自社のみならずサプライチェーンを含めた人権尊重への取組みが求められてきている中、当社グループはグローバル企業としてすべての人々の人権を尊重することが企業として果たすべき社会的責任であることを認識し、人権尊重に向けた対応も重要課題と位置づけました。
そして、特定したマテリアリティと経営方針との統合には、ステークホルダーとの対話を踏まえ、どのように社会的課題を克服するかについての全社的な議論(透明性の高い経営)を行うことと、それらを実行に移す組織力(さまざまな人々が働ける職場環境(陸上・海上)と多様性に富む人材で構成される組織)が重要と認識しています。

マテリアリティの特定/妥当性判断プロセス

Step.1 社会的課題の抽出 事業に関連する社会的課題を認識するため、一般的な社会的課題(企業行動憲章やSDGs)、国内特有の課題(改訂コーポレート・ガバナンス・コード)、業界特有の課題(SASB)を加味し、約40項目の社会的課題を抽出。Step.2 ステークホルダーの意見集約 各ステークホルダー(顧客、取引先、株主、金融機関、役職員など)との対話や個別アンケートからステークホルダーにとって重要な社会的課題を整理。Step.3 社内での議論・評価 整理した社会的課題を①社会への影響度②事業への影響度③重要度④当社の対応状況の4つの観点から取締役会メンバーで議論・評価。Step.4 取組むべき目標の決定 議論・評価によって抽出された9つの社会的課題を当社が取組むべき目標とし、それぞれの属性に合わせて4つに整理し、マテリアリティのカテゴリーを決定。Step.5 目標の妥当性の判断 ステークホルダーの意見集約を改めて行い、決定した目標の妥当性について取締役会で議論・評価を実施し、必要に応じて見直しを実施

2023年度のマテリアリティのリスクと機会、主な取組み

Environment Social Governance
新しい設備、技術、燃料の導入とDX活用で地球環境を保全 安全安心を各ステークホルダーへ提供 ガバナンスを強化し経営の透明性を追求
多様性のある人材を確保し人的資本として活用
人権尊重
サプライチェーンとの協働
マテリアリティ
脱炭素社会の実現
  • 積極的な新設備・技術・燃料の導入
  • 再生可能エネルギーの活用
  • 省エネ技術の積極的に採用
KPI
GHG削減率
安心・安全
  • 安全に働ける職場環境の整備
  • 事故の防止
  • 事故発生時の対応強化
KPI
重大事故発生件数
腐敗防止含めた
コンプライアンス
  • 腐敗防止、反社対応、独禁法遵守
大気汚染・廃棄物の削減
  • 低硫黄燃料の使用
  • プラスチックの使用量削減、3Rの推進
KPI
GHG削減率
多様性と人的資本の強化
  • 人材の多様性の推進と多様な人材を受け入れられる環境整備
  • 人的資本の育成、強化
KPI
重大事故発生件数
育児休業取得率
海外短期研修・
海外駐在経験者
リスク管理の高度化
  • 適切なリスクテイクをする体制を整備
生物多様性の保全
  • バラスト水処理装置の導入
  • 森林づくり
人権対応
  • サプライチェーンも含めた人権対応を推進
KPI
人権研修受講率
コーポレート・
ガバナンスの強化
  • 内部統制の強化
  • 各ESG課題に対応する経営・組織体制の確立
リスクと機会
(リスク)
  • 保有資産やノウハウなどの知的資本の陳腐化が加速
  • 脱化石燃料で海上荷動きが変化し輸送量が減少
  • 異常気象により航海やビルの安全が阻害
(リスク)
  • 人材の多様性の推進と多様な人材を受け入れられる環境整備
  • 人的資本の多様化、育成に対応できず企業競争力が低下
  • 労務環境の悪化でヒューマンエラーによる事故が発生
  • 自社のみならずサプライチェーンにおいて人権侵害が発生し、信用失墜、経営リスクに繋がる恐れ
(リスク)
  • 内部統制の機能不全で不祥事が発生し信用失墜
  • 過剰なリスクテイクによる想定外損失、過度のリスク回避による企業価値向上の機会の逸失
(機会)
  • 環境対応したサービスを顧客に適正な価格で提供
  • 各環境規制を先取りし顧客と協働して新技術を実装
  • 脱化石燃料で生じる新しい海上荷動きの取り込み
(機会)
  • 事故発生率の減少により、更なる安定したサービスの提供が可能となり、顧客満足度向上に寄与
  • 人的資本の蓄積で生産性向上
  • 多様な人材交流の活発化によりレジリエントな組織に
(機会)
  • ガバナンスの強化により各ステークホルダーの立場を考慮した経営を実践
  • リスクとリターンを適切に管理した上で、投資を行い企業価値が向上
主な取り組み
  • 二元燃料主機関搭載船の建造
  • 風を推進力とするローターセイルを大型ガス船に設置
  • スタートアップと協働してCII対応
  • 脱炭素社会に向けたロードマップを作成
  • バイオディーゼル燃料の実証実験を実施
  • 事故を未然に防ぐために策定された各種施策を安全環境委員会で精査
  • 事故発生時の対応策の有効性を確認する訓練の実施
  • 大地震発生、感染症蔓延を想定した事業継続計画(BCP)を策定
  • 船員の労働負荷低減のため、運航スケジュールを調整
  • 腐敗防止方針の策定
  • インサイダー取引規制研修、ハラスメント防止講習の実施
  • プラスチック削減のため高性能造水器をVLCCに設置
  • PETボトル自動回収機を日比谷フォートタワーに設置
  • 多様性(外国人、中途採用、性別)のある人材の採用と育成・強化
  • 内航船船員の自社養成
  • 取締役会、リスク管理委員会および経営監査室が共同してリスク管理
  • 投融資委員会の開催
  • バラスト水処理装置設置
  • 埼玉県森林づくり協定の締結
  • 社内横断的ワーキンググループを設置
  • 国連グローバル・コンパクトへの賛同
  • 人権方針の策定
  • 人権デューデリジェンスの実施
  • 調達方針およびサプライヤー行動規範の策定
  • 英国現代奴隷法に関する声明
  • 指名・報酬諮問委員会の委員長を独立社外取締役が務める
  • 女性取締役の登用
  • 取締役の任期短縮(2年から1年)

マテリアリティマトリクス

当社グループの事業に関連する社会的課題について、ステークホルダーとの対話や個別アンケートから、ステークホルダーにとって重要な社会的課題を整理し、社会および当社グループの事業への影響度、重要度ならびに当社の対応状況の観点から取締役会で議論・評価しました。その中から9つの社会的課題を、当社グループが取組むべき目標として特定し、その影響度にあわせてプロットしました。不変のマテリアリティとして、安全・安心をマトリクスの枠外に最上位に位置づけているのは、当社グループが「安全の確保」を企業理念に掲げ、海運・不動産の各事業を通じてステークホルダーへ提供する価値の中で、安全・安心を最も重視するという強い意志によるものです。

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