社会

多様性推進と人的資本の強化

方針・戦略

飯野海運グループの人材方針

当社グループでは、サステナビリティ基本方針において「飯野海運グループは、すべての人々の人権を尊重し、人権啓発に努め、不当な理由による差別を禁止します。」と定めていることに加え、「飯野海運グループは、多様な人材が活躍できる環境整備を行うと共に、一人ひとりが心身ともに健康を保つための取組みを推進します。」と定めています。さらに中期経営計画では、マテリアリティの克服による社会的価値の創造を重点戦略に据えています。マテリアリティ克服のためには優秀な人材の育成・確保・活用は欠かせない重要な基盤であると考え、研修の充実や多様な人材が働ける職場環境の構築を進めています。

日本国内だけでなく海外においても、シンガポール現地法人におけるシンガポールや周辺国出身の現地スタッフの雇用、 海上で働く船員の出身国である韓国、フィリピン、ミャンマーでの奨学金制度や乗船実習機会の提供などを通じて雇用を創出しています。

なお、企業理念およびサステナビリティ基本方針は英語に翻訳し、当社Webサイトにて公表することで、当社グループで働く世界中の従業員に向けて伝達と周知を行っています。

サステナビリティ基本方針(英語版)

海運業
海上における基本的な考え方

当社グループでは、安全の確保を社業の基盤と定めています。海運業において安全を確保する上で重要なカギを握るのは現場で働く船員です。船員の確保・育成は、当社グループが強靭な組織となるために欠かせない重要な取組みであり、人材育成・働きやすい職場環境の整備および改善を進めています。

陸上における基本的な考え方

当社は、「少数による運営」「モチベーション向上、活性化を促進」「一人ひとりを細かく見る」という人事基本方針に則り、各社員個々人のニーズや適性に配慮しつつも、幅広い分野の知識と経験を身につけ、新しい時代へと果敢に挑戦していくことができる人材の育成・キャリアマネジメントに積極的に取組みます。

不動産業
不動産管理における基本的な考え方

不動産の管理では、サステナブルな社会に向けて人材関連の取組み強化に努めています。当社グループではオフィスで働く人々の安全で健康な環境の提供、労働基準法に準拠した強制労働と児童労働の禁止、サステナビリティ基本方針にて規定されている差別の撤廃などを徹底してオフィス管理を行っています。

取組み

海上における人的資本の強化
働きやすい環境づくり

海上職員向けの施策としては、24時間365日稼働する本船に乗船し、家族から離れて業務を行う船員の労働環境を整備・サポートするための取組みを行っています。

労働環境を整備・サポートするための施策

労働・休息時間
の管理
十分な休息時間が確保できるよう、オンラインで労働・休息時間を把握できる管理システムを管理船に搭載し、乗組員の休息時間をモニター・管理しています。
過重労働を防ぐ
ための対応
各船の労働・休息時間をモニターし、過重労働が見込まれる場合は追加船員を配乗するなどの対応を講じ、乗組員のワークロードをコントロールしています。
船内Wi-Fi設備
の設置
各船には常時接続で通信可能な船内Wi-Fi環境を設置し、乗組員が個人のスマートフォン等から家族や友人とメールやチャット、SNS等で連絡を取ることができる環境を提供しています。
本船への家族
呼び寄せ
本船が港に入港した場合は、乗組員の家族が本船に面会に来ることが容易になるよう、その訪船旅費や宿泊費を補助する制度を設けています。
船員のメンタル
ヘルスケア
職場とプライベートまた休息の場が混同する船上環境では、仕事と休息の気持ちの切り替えを行うことが重要です。ストレスによるメンタル不調者を出さないために、当社では船員や管理者に対しストレスの理解とセルフケア、メンタル不調者の対応とラインケアなどの研修を行い、船上において実践しています。
管理監督者が実施主体となり、従業員とのコミュニケーションを通して職場環境の把握と改善を図っていくメンタルヘルス対策のこと。

データ集(社員支援体制)PDF

人材育成の取組み

技能研修、安全研修の実施

船舶を安全に効率よく運航するために、船員に対し各種機器メーカー主催の技術講習・資格講習・技能向上訓練を実施し、個人の知識・技術向上を図っています。また、船舶の安全運航の成就は乗組員の総力が必要条件であり、船上で働く多様な船員の相互理解や関係性の構築を重視し、異文化理解、ハラスメント防止、メンタルヘルスに関連する研修を取り入れています。これらの教育訓練は、トレーニングマトリックスにより管理され、船員がその職位に応じて適した時期に適した教育訓練が受けられるようにしています。

総合力を備えた海技者育成のための海陸ジョブローテーション

船上における船舶運航技術だけでなく、船舶管理や新規ビジネスの技術サポートを担う総合力を備えた海技者の育成のため、当社では船員に対し定期的な陸上勤務を含むジョブローテーションを行っています。また、グローバル感覚を持った海技者養成のために、海外営業店所への配置も行っています。

有能な人材を採用するための取組み

内航・近海海運業では水産高校専攻科の卒業生をはじめ、全国の海技者養成機関卒業の海技免状取得者を採用してきました。人口動態変化により内航海運の船員不足に対応するため、海技免状を取得していない水産高校の一般生徒(本科卒業生)を積極的に採用しています。海技免状取得の要件となる乗船履歴(実質2年ほど)を運航船での実務を通して確保し、さらに海技免状と合わせ小型ガス船において危険物を取り扱うために必要な危険物取扱免状の取得も行い、将来の上級職となる船員を自社で養成しています。

また、船舶料理士を取得できる教育機関が全国に2校と限られており、司厨員の不足が顕著となっていることから、一般の調理師学校修了生や調理師免許所持者を採用し自社で船舶料理士の育成を行っています。さらには他船主と連携を図り、危険物免状を持たない船員を乗船させ乗船履歴を確保することで相互に育成する協力体制の構築も行っています。

今後の更なる取組みとして、公益財団法人日本船員雇用促進センター(SECOJ)の船員確保支援事業を活用し、一般の大学や高等学校から学生の採用を行い、自社養成を強化することを検討しています。

陸上における人的資本の強化
働きやすい環境づくり

各種法令を遵守した就業規定

労働基準法や各種法令を遵守した就業規程を定めています。具体的には、所定労働時間および法定労働時間を超えて勤務を行った社員に対しての時間外勤務手当の支給、年次有給休暇の取得、法定・法定外休日の規定、採用者の年齢の確認等の規定等が就業規程によって定められています。

ワーク・ライフ・バランスを推進する制度の拡充

ESG投資においても、多様な人材の育成・活用が重視され、その対応を目に見える形で実行することが長期的な企業の成長を促すとされています。当社グループが今後長きにわたって持続的に成長するためにも、人材の活躍が欠かせません。社員が仕事と家庭を両立しながらいきいきと働ける職場づくりを目指し、ワーク・ライフ・バランスを推進する制度の拡充を進めています。

子育てや介護などをする社員にとっても働きやすい労働環境の整備として、在宅勤務制度や1時間単位で有給休暇を取得できる制度、時差出勤制度、時短勤務制度、ジョブリターン制度(再雇用制度)、事業所内保育所との連携などに取組んでいます。

また、2022年4月より産婦人科・小児科オンライン、2022年6月より企業主導型ベビーシッターサービスの利用を開始し、社員の育児休業からのスムーズな復職や、子育てと仕事の両立を支援しています。

データ集(社員支援体制)PDF

再雇用の取組み

当社では、2006年4月より定年嘱託の労働条件および就業に係る規定として定年嘱託就業規程を定めています。2013年の高年齢者雇用安定法の改正を受け、その対象者基準の適用が厚生年金(報酬比例部分)の支給開始年齢に達した日以降となるよう、2013年4月より就業規程と定年嘱託就業規程を改定しています。これは、定年退職者が退職後の雇用を希望し、一定の要件を満たす場合は65歳まで再雇用する制度です。

また、2020年6月には、育児、介護、配偶者の転勤などに伴い退職した従業員を再雇用するジョブリターン制度を導入しています。

差別やハラスメントの防止のための取組み

差別やハラスメントの防止のための措置として、セクシャルハラスメントおよびパワーハラスメントの防止に関する規定の制定、年1回のハラスメント防止のための講習会、採用時の性別記入欄の撤廃、性別や学歴による差別がない給与体系を実施しています。

人材育成の取組み

自己実現の機会の提供:人事評価制度

当社の人事評価では、組織目標の達成に向けたマネジメントの仕組みとして目標管理制度を導入しています。この制度は、各年度における組織目標の達成に向けた個別目標を上司と社員が協議して社員ごとに設定し、組織目標の達成に向けた行動を組織と社員が一体となって進めています。半期ごとに、社員は設定目標に対する自己評価および評価してもらいたい内容をアピールするための面談を上司と行い、社員の評価は、上司による評価の後、最終的に人事評価協議会で確定しています。評価結果は、社員一人ひとりに気づきを与えることを目的として、フィードバック面談において上司から伝えられます。評価結果は月例給や賞与だけでなく管理職への早期昇格にも反映されるなど、仕事を通じた目標達成や成長感など、社員一人ひとりの活性化を図り成長を促す仕組みとなっています。

また、エンゲージメントの一環として、毎年社員全員に自己申告書(担当業務の状況や職場環境、異動希望、将来の目指す方向等を人事部に申告するもの)の提出を求めています。中長期的な人材育成の観点や組織運営上の観点から、社員一人ひとりの将来のキャリアや能力発揮の方向性を会社として把握し、本人が思い描くキャリアを実現できるよう可能な限り支援・指導を行っています。

人材育成のための取組み

中期経営計画の重点戦略である「人的資本の強化」では、職場・労働環境を整備して、多様な人材を確保し育成していく「人材への投資」に注力すること、また、従業員一人ひとりが能力を発揮できる機会を提供し、その成果を適正に評価する「人材戦略」を推進することで、従業員のエンゲージメントを高め、会社業績の向上と従業員の自己実現の両立を目指しています。

海外短期研修・海外駐在経験者数をKPIとして設定し、2025年度末までに現在の累計54名から75名に増やすことを目標としています。グローバル事業の拡張に向けて、グローバル人材の育成は重要な課題と捉えており、コロナ禍で中断していた海外短期研修や乗船研修も順次再開していく予定です。国内では、オンラインでのビジネス英会話プログラムや、経営・マネジメント力の向上に向けたビジネス講座など、eラーニングツールを活用した研修の充実を図っています。さらに、公的資格取得奨励金制度による従業員の自律的な能力開発も支援しています。

人材育成プログラム

データ集(研修時間、キャリア開発に関するデータ)PDF

データ集(不動産業:2022年度の資格保有/講習の受講者)PDF

人材の多様化(ダイバーシティ)の推進

飯野海運グループ人権方針において国籍、人種等による差別を行わないことを定め、人材の多様化に取組んでいます。当社グループには陸上職員と期間雇用の船員を含む海上職員約1,300人(2023年3月末時点)がおり、韓国人、フィリピン人、ミャンマー人、インド人などのアジア系を中心とした多様な人種と国籍の従業員が勤務しています。また、ケミカル船の自主運航を担うシンガポール現地法人においても、日本人に加えてシンガポール人、インド人、インドネシア人などアジア系を中心としたスタッフが働いています。海外拠点では、グローバルな事業展開を支える人事施策として、海外において活躍できる日本人従業員の育成と同時に、現地の多国籍スタッフの採用と育成の強化、透明性の高い人事評価制度を導入しています。今後も人種、国籍にとらわれない能力重視の人材登用を行い、役職員の多様化(人材と能力)を推進していきます。

女性活躍の推進

2023年3月現在、当社では女性総合職25名が勤務しています。2022年度の当社グループ全体の女性比率は18.4%、当社単体の女性比率は22.4%となりました。2020年度の単体女性管理職比率は1.4%でしたが、2022年末には新たな女性管理職の登用などにより5.0%となりました。今後更なる女性管理職比率の向上を目指すべく、総合職(管理職候補者)に占める女性比率をKPIとして設定し、2025年度末までに現在の16%から20%に引き上げることを目標としています。多様な視点や価値観により新しい発想やイノベーションが生み出されると期待しています。今後も女性管理職の登用に向け、管理職候補者となる女性総合職の比率を高めるとともに、女性の活躍推進にも取組んでいきます。また、性別だけでなく、年齢、人種や国籍、価値観、職歴等の点からも幅広く多様な人材の採用を積極的に進めています。

データ集(社員の多様性)PDF

外国人の管理職への登用

当社では、2023年4月に外国籍社員1名が入社しました。引き続き多様性の確保に向け、積極的な採用を進めます。なお、当社グループでは67名の外国籍社員が在籍しており、そのうち16名が管理職です。

今後も人種、国籍にとらわれることなく能力重視の登用を行い、現状以上を目指します。

キャリア採用者の管理職への登用

2023年3月末時点、キャリア採用総合職全体に占める管理職比率は37.5%であり、当社のビジネスを支える人材として活躍しています。管理職全体に占めるキャリア採用者比率は11.3%となっており、今後積極的なキャリア採用を進めることで、現状以上を目指します。

当社における女性・外国人・キャリア採用者の集計対象はグループ会社への出向者を含めています。