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社長就任挨拶

4月3日、当社グループ役職員向けに行われた、大谷新社長の就任挨拶を下記の通りお知らせします。

社長就任挨拶

この度の社長就任にあたり、役職員の皆様に一言ご挨拶申し上げます。まずは足元の確認として、現在の事業環境から考えられる課題と新旧の中期経営計画についてお話します。

【課題認識】

当社を取り巻く事業環境は、地政学リスクの増大や新たな冷戦によって不透明感が増大していることに加え、世界的なインフレと金融引き締めによる景気後退懸念が強まっています。

海運業においては、コロナ禍での物流網の混乱や巣ごもり需要に加え、ウクライナ情勢によって世界の海上物流が大きく変化したこともあり、この2年ほど海運市況には追い風となっていました。しかしながら、インフレによる船価の高騰の影響もあり、GHG排出量の抑制に向けた次世代船への新規・代替投資には高いハ-ドルとなっています。また、インフレは様々な船舶・ビル管理コストの上昇にもつながり始めています。

次に不動産業においては、コロナ対策によって人々の行動様式や価値観が変化し、当社をはじめリモ-トワ-クが世の中に浸透する一方、オフィスビルの空室率の高止まりに加え、東京都心部ではオフィスの供給過剰が常態化しつつあります。更に、インフレにより光熱費の高騰ならびに管理費や資材費の上昇が発生しています。

【中計:前中計振返り、新中計】

20年度~22年度を期間としていた先の中期経営計画「Be Unique and Innovative. : The NextStage‐2030年に向けて‐」は、その期間を無事に終了しました。その中計を振り返ると、過去最高益を2年連続で達成したこともあり、当初掲げた数値目標は、部門によっては未達のところがあったものの、全体ではクリアすることができました。また、3つの重点強化策についても、概ね計画通りに進捗したと評価しています。グロ-バル事業の更なる推進としては、欧州の新規顧客との契約締結や米国不動産案件への参画、海外事務所の増強などを実施しました。

安定収益基盤の盤石化については日比谷フォートタワーの竣工、新造VLCCやLPG二元燃料主機関搭載VLGCが稼働を開始し、安定収益に貢献しています。サステナビリティへの取組みとしては、海運業ではAIを利用したCII最適化ツ-ルの導入やアンモニア輸送への再参入を決定、不動産業では飯野ビルへの太陽光パネルの設置、米国での木造オフィス開発に参画などを実施しました。

このように先の中計に於ける業績目標・重点強化策はともに概ね計画通りに進んだ一方、持続的な企業価値の向上に向けて取組むべき課題はまだ多くあると考えています。コストアップを伴う環境対応型次世代技術を軸とした船舶・不動産に対する投資の推進や、更なるグロ-バル展開による新規顧客の獲得、多様性の尊重や働き方改革をはじめとする人的資本の強化、サプライチェ-ンを含めた人権対応、DXの更なる推進等々、次々と課題が認識されてきています。

こうした環境の下、昨年から新しい理念体系ならびに中期経営計画の策定作業を行っています。様々なグループ内関係者とも協議を進めており、最後の詰めの段階になっています。新しい理念体系の改訂にあたっては、役職員向けにアンケート協力を依頼し、海陸合わせて100名ほどの回答を頂きました。これらの貴重な回答も参考にしながら、海運業、不動産業の存在意義と社会への提供価値とは何か、それをどう表現するか、検討を行っています。この新理念体系を最上位に据え、新たな中期経営計画に繋げて行きたいと考えます。新中計については後程少しだけ触れますが、その全容は先に述べた中期的課題への対応含め、5月9日に公表の予定です。

次に社長就任の思いと2030年に向けた抱負を述べたいと思います。

【2030年に向けた抱負】

飯野海運は今年で創立124周年、歴代13名の社長により脈々とバトンが引き継がれてきました。まずは、第14代の社長として、その任務を全うし、次の世代へバトンを繋げていきたいと考えます。

冒頭に述べたように、取り巻く事業環境は刻々と変化もしながら、予測不能なことも多く、舵取りは非常に難しいように思えます。将来に向かった旅や広がった道と言うよりも、先々山あり谷あり、波乱万丈だが、その中でも果敢に挑戦し、結果を出していく「冒険」のようにも感じています。しかし、過去そうであったように、幾多の試練や環境の変化が激しい中でも当社の諸先輩方は柔軟に対処し、結果、今に至っています。これからもそのDNAを受け継ぎ、守って、様々な脅威を乗り越えながら、強靭で安定した会社にしていきたいと思います。

そのためには、社業の基盤である安全と品質の確保は最優先であり、海陸役職員一体となって成し遂げようとする力が必要です。多様な人材を確保し、人材育成に加え、働きやすい職場環境の整備も行い、会社と従業員が共に成長し、事業へ貢献できる体制を推進したいと考えます。

當舍前社長中心に先の中計で定めた飯野海運グループのありたき姿である"IINO VISION for2030"を受け継ぎ、経済的、社会的価値の創造、つまり「共通価値の創造」を目指していきたいと思います。現在策定中の新しい中計では、これまでの利益の積み上げで強固になった財務基盤から持続的な成長を実現すべく、安定収益や成長事業、また環境配慮へ、その経営資源をどのように効率的に配分し、それを管理していくかを検討しています。加えて、2050年ゼロエミッション達成に向けた長期間の環境ロードマップを策定し、脱炭素社会の実現に向けた取組みも強化していきたいと考えます。これは稼ぐ力の向上と脱炭素に向けた社会貢献の両立というミッションとも言えると思います。

【グループ役職員へのメッセ-ジ】

わたしの仕事の信条は、まずは相手の懐に入ること。自分のことを知ってもらうとともに相手の話を良く聞き、双方の置かれた立ち位置を理解し合うことから仕事を始めています。その積み重ねから、この人に訊いたら、相談に乗ってくれる、または直ぐに反応があるので次に動きやすくなる、など信頼関係が生まれてくるものと思います。仕事は指名されて何ぼ、指名されなければ、仕事も拡がりません。この会社に入社して32年が経過しましたが、今まで様々な場所で、多くの人たちとの出会いがありました。これらの交流を通して、良いことも、悪いことも、また刺激を受けたことも、知識が拡充したこともあり、間違いなく自身の財産になりました。多くの人に会えば、それだけ多様な気付きがあるはずです。

今年の新年の挨拶でこんなフレーズがあったのを思い出しました。「外に出て、人に会って、多様な考えに触れ、新しい経験を積み上げることで、皆さんの見識が広がり、自身の成長にも繋がります。少数精鋭の飯野海運においては、皆さん一人一人のレベルアップが、会社の成長の大きな原動力になるのです。」

新しい年度にもなりました。皆様、一緒に前に進んで、また輝かしい新たなページを創って行きましょう。

以上