2024年 社長年頭あいさつ
飯野海運株式会社代表取締役社長大谷祐介は、1月4日に飯野海運グループ全役職員に向けて2024年年頭挨拶を行いました。
2024年 新年挨拶
2024年を迎え、役職員の皆さんに年頭の挨拶を申し上げます。
初めに、元旦に発生し、現在も余震が続く令和6年能登半島地震で被災された方々に心よりお見舞い申し上げますとともに、犠牲になられた方々に、謹んで哀悼の意を表します。
悪化する中東情勢に伴い、紅海および周辺海域の緊張が高まる中、当社グループ海運業の最前線で、日夜の船上業務に尽力され、エネルギーの安定輸送において重要な役割を果たし、さらには当社の企業理念「安全の確保を最優先に、人々の想いを繋ぎ、より豊かな未来を築きます」の実現に貢献いただいている乗組員の皆さんには、この場を借りて心より感謝申し上げます。紅海を中心に周辺海域は予断を許さない状況ですが、陸上側においても各船への対応・支援および安全管理体制をしっかりと構築・維持していきますので、引き続きよろしくお願いいたします。
さて、本日の私からの挨拶は、「成長に向けた挑戦」をテーマに、昨年の振り返りと今年の展望から始め、当社の2024年を象徴するトピックとして、アンモニア運搬船の竣工、本社オフィスのリニューアルについてお話させていただき、結びという構成となります。
まず、昨年を振り返ると、国内では新型コロナウィルスの5類移行に伴い、日常生活で実質的な制約がなくなり、社会活動や経済活動が活発化しました。一方で、世界に目を向けると、ウクライナ情勢の長期化やイスラエルとハマスの軍事衝突により中東情勢が緊迫化し、地政学リスクは一層、高まりました。また、欧米主要国での金融引き締めや、中国の不動産不況による経済の減速感も強まる中で、IMOのMEPC80では、国際海運の新たなGHG削減戦略が採択され、またCOP28では、エネルギー転換を前面に出した「化石燃料からの脱却」が成果文書に盛り込まれるなど、脱炭素に向けた世界的な流れが加速した一年でした。
当社においては、新たな経営体制のもと2025年度までの中期経営計画「The Adventure to Our Sustainable Future」の達成に向け、全役職員の挑戦が始まった年でもありました。
さて、2024年はどうなるでしょうか。私は2023年と同様、世の中の変化が激しく、先行きが不透明で、将来の予測が難しい状況が続く、あるいは一層難しさが増すのではないかと考えています。1月の台湾総統選挙から始まり、6月のEU欧州議会選挙、11月にはアメリカの大統領選挙が控えており、それぞれの選挙結果次第では地政学リスクの更なる高まりはもちろんのこと、グローバル経済の細分化の動き、すなわち、経済のデカップリング(分断)からデリスキング(リスク低減)の加速により、サプライチェーン・物流が変化することも考えられます。
既に為替相場では、昨年末以降動きが見られていますが、2024年は当社を取り巻く様々な環境、特に、海運・不動産市況、金利、鋼材価格などのこれまでのトレンドの潮目が変わる可能性も十分あると思います。このような不透明な中でも、我々は「どうありたいのか」あるいは「何が起こりえるのか」、しっかりと将来を予測し、見極め、何をすべきなのかを、バックキャスティングで考え、先手を打って準備しておくことで、ピンチには備え、チャンスは逃さないことができると思います。
それでは、2024年に当社が着手する「成長に向けた挑戦」について2点ほどお話します。
まずは、アンモニア運搬船の竣工についてです。当社は中期経営計画において、2050年に向けたカーボンニュートラルへの挑戦をテーマに据えています。CO2排出量の多い海運業における削減への取り組みとしては、船舶燃料を重油から転換していくのが最も効果の高い方策です。これまで当社は、メタノールやLPGを燃料とする二元燃料船を導入し、日々の運航と管理を通じて、経験と知識を積み上げてまいりました。次世代燃料の方向性はまだ明確になっていませんが、アンモニアは燃焼時にCO2が発生しないという特徴から、ゼロエミッション燃料の有望な候補の一つとされ、舶用エンジンメーカーによる技術開発が進んでいます。
こうした中、米国American Bureau of Shipping(ABS)によるアンモニア燃料船化の基礎認証を受けて設計・建造されるアンモニア運搬船が、今年の2月に竣工し、当社船隊に加わります。基礎認証ということで、竣工時は重油を燃焼するエンジンとなります。当社日本人船員を配乗し、インハウスで船舶管理を行い、グループの力を結集して、アンモニア燃料エンジンが商用化され次第、速やかに換装工事に移るための計画をしっかりと立てていきます。また、本船には船陸間の高速データ通信が可能なStarlink、衛星ブロードバンドインターネットの導入をはじめ、当社グループの安全運航の高度化と現場の技術的知見をデータとして組織に蓄積し、活用が可能となるような試みが多く採用されています。その意味において、本船は一隻のガス船の竣工にとどまらず、当社グループが脱炭素を始めとする時代の要請に先駆けて着手し、イノベーターとして革新的な取り組みを続け、新たな商機を逃さずに成長を続けていく長期戦略の第一歩と位置づけています。
次に、本社オフィスのリニューアルについてお話します。
飯野ビルが竣工してから12年が経過しましたが、その間にはコロナ禍を経て多様な働き方を経験し、対面コミュニケーションの重要性を再認識しました。また、情報通信技術ICTの発展、サステナビリティへの対応などもあり、オフィスの役割や求められるものが大きく変わっています。
今回、中期経営計画の重点戦略「人的資本の強化」の一環として、飯野ビルの本社オフィスの改修工事を行い、リニューアルすることを決定しました。昨年から所管部門を中心に社内横断ワーキングチームが検討を進め、役員会においても議論を重ねてまいりましたが、当社にとってのオフィスは、「役職員が集い・繋がることで気づきが生まれる場」と定義しました。詳しく言えば、役職や組織の垣根の無い交流が日々生まれ、業務を超えた関心を持てるようになることで、会社の事業成長はもちろん、私たち自身の成長にも貢献できる、そういう場所でありたいと考えています。
飯野ビルディングは過去から当社不動産業における揺るぎない柱であり、今後もそうあり続けていかねばなりません。リニューアルされたオフィスで新たな働き方を我々自身が実践し、成果を上げていくことで、顧客に対してもオフィスの新たな価値をアピールできます。まさしく、企業理念:IINO PURPOSEに謳う、不動産業における人々の想いをつないでいけるかを、新オフィスで働く全ての人が実践していくということです。私たち一人ひとりが社内交流や業務を超えた関心を持ち、自律的に働けるよう意識改革をしていきましょう。
さて、「成長に向けた挑戦」をテーマに、不確実性が一層高まり、潮目が変わりうる2024年についてお話しました。先ほど、将来を見据えて、今やるべきことを考えるバックキャスティング思考に触れましたが、より確度の高い将来予想をするためには、昨年の創業記念日で述べた通り、外に出てアンテナを高く張り、取引先の動向や周囲の状況含め、情報を機敏に察知することが肝要です。得た情報を多様な人材で分析・議論・評価し、その上で方向性を決めたら、皆で勇気をもって前進していく。何が起こるかわからないから、リスクがあるからといって、現状の維持・延長線で仕事を進めていけば、瞬く間に競争に負け、時代に取り残され、社会から必要とされなくなります。不確実性やリスクを見極め、それを乗り越えた先に成長の果実が待っています。
皆さん、今年は「成長に向け、挑戦」をしていく年です。役職員一丸となって挑戦し、未来に果敢に飛び込んでいきましょう。
結びにあたりまして、
グループ全船の安全運航、所有ビルの安全無事故
グループ各社の一層の繁栄
グループ役職員の皆様ならびにそのご家族のご健勝とご多幸
平和と安寧な世界の訪れを祈念いたしまして、私の挨拶とさせて頂きます。
以上