2024年 創業記念日 社長挨拶
当社は2024年7月1日に創業125周年を迎え、代表取締役社長 大谷祐介が6月28日に飯野海運グループ全社員に向けて下記の通り挨拶を行いましたのでお知らせいたします。
来週月曜日の7月1日に、125回目の創業記念日を迎えるにあたり、役職員の皆様に一言ご挨拶申し上げます。
まずは、中期経営計画「The Adventure to Our Sustainable Future」の初年度の進捗についてお話します。初年度の2023年度は、関係会社や海外拠点、そして乗組員を含むグループ全役職員の努力により、計画を大きく上回る成果を上げることができました。
重点戦略の経済的価値の創造については、その成果である業績において、連結経常利益が過去最高を更新し、また、今回の中期経営計画から目標に加えた投下資本利益率(ROIC)も計画を大きく上回りました。財務基盤は益々強固になり、信用格付けも一段階上がりました。好業績の背景は、地政学的リスクなどの外部環境の変化によって、海運市況や為替相場が当社にとって有利に推移したこともあります。しかし、それだけでなく、紅海情勢への対応含め船陸で万全な安全管理体制を取った上で、新たな航路や荷主の開拓に積極的に挑戦した結果です。不動産業においても、コロナ禍から脱却し国内の経済・社会活動が正常化していく中、安全・品質管理にしっかり取り組んだ上で、安定収益の確保と向上に努めました。
さらに、海運・不動産共に上昇したコストについては、顧客との対話を重ね理解を得た上で、適切にサービス価格に反映する取り組みも実を結んでいます。また、事業ポートフォリオ戦略に基づく成長投資も順調に進んでいます。具体的には、自主運航ケミカル船の新造整備や、長期契約に基づく新造LPG船の発注、不動産においてもロンドンのハイグレードなオフィスビルの取得などを実行しました。
次に、社会的価値の創造の進捗についてです。2050年までのカーボンニュートラルの達成に向けた温室効果ガス(GHG)削減への取り組みでは、GHG排出量も考慮した効率運航の実施に加え、次世代燃料船の建造・運航管理の拡大によって技術的な知見の蓄積を図り、更なる投資に繋げるべく対応を進めています。また、「人的資本の強化」と「人権尊重への対応」についても、中期経営計画の戦略に沿って全社を挙げて取り組んだことで、国際的なサステナビリティ評価機関や環境調査団体から高い評価を得ることができました。
以上の通り、中期経営計画初年度は、全役職員の皆さんの頑張りのおかげで、とても良いスタートが切れました。中期経営計画の戦略は、各部各社が達成すべき目標(ミッション)と業務遂行計画に連携しており、皆さん一人ひとりの目標設定につながっています。従って、個人の目標を達成できれば、会社の目標達成につながるという仕組みです。しかし、企業理念「IINO PURPOSE」や中期経営計画の戦略をしっかりと理解・意識し、全体の中での自分の役割を認識した上で業務に取り組むことで、個人、部署、そして最終的には会社全体の成果がさらに向上するはずです。
次に、独立系グローバル企業グループを目指す当社独自のビジネスモデル、海運業と不動産業の両輪経営「IINO MODEL」を例に、もう少し過去を振り返ってみたいと思います。昨年度の業績は先ほど説明の通りですが、過去20年程の当社業績を紐解いていくと、決して順風満帆ではなく、むしろ幾度も苦難な時代がありました。そのような中でも「IINO MODEL」が有効に機能してきたことで、今日の当社につながっていることが分かります。
先ず、2000年代半ばからの中国の急速な経済成長により、特にドライバルク船を中心に海運業が好調となった際に、それまでの収益の柱であった旧飯野ビルディングの建て替えを2007年に決定し、その解体関連費用や閉館に伴う収益の落ち込みを補いました。しかし、2008年のリーマンショック以降は、金融不安の影響で為替相場が超円高に推移し、好調だった海運市況も下落に転じましたが、2011年に今の飯野ビルディングが竣工し、今度は不動産が海運を支えました。不動産による安定収益がある中で、競争力を喪失したドライバルク船やケミカルタンカーのコスト構造改革を機動的に断行したことで、その後の海運不況を乗り越えることができました。
2020年以降は、記憶に新しいかと思いますが、コロナウィルスの大流行によるサプライチェーンの混乱からドライバルク船市況が上昇に転じ、2022年は円安の急伸に加え、ロシアによるウクライナ侵攻を契機とした海上物流の変化により、ケミカルタンカー市況も上昇しました。昨年度については、先ほどの説明の通り、過去最高の経常利益を更新し、海運・不動産ともに将来に向けた成長投資を実行しています。
このように、当社は、海運業、不動産業をバランス良く経営し、産業リスクの分散による損益の相互補完効果を得ています。さらに、海運業においては、顧客のニーズに応じて拡張してきたバラエティに富む船種を、自主運航や貸船といったサービス形態も組み合わせ、「IINO MODEL」を進化させてきました。各事業は苦しい時期に支え合うだけではなく、平時は人的交流を持ち、事業間シナジーを意識し切磋琢磨しながら、夫々の強みを伸ばす努力を続けてきたことで、会社全体で幾度の荒波を乗り越え125周年を迎えています。
当社の強みは、海運・不動産業共に顧客に「安全かつ高品質なサービス」を提供することにありますが、その土台には、「IINO MODEL」という、短期的な事業利益の変動に囚われること無く、中長期目線で企業価値に資する経営を可能とする独自のビジネスモデルがしっかりと根付いています。このIINO MODELによる経営が、顧客や金融機関を始めとする取引先、社会、役職員および株主など、全てのステークホルダーから当社への長期に渡る信頼という財産を築いています。そして、そのステークホルダーからの信頼という財産によって、当社グループが新たな価値を創出し、成長するという好循環を生み出しています。このことを、改めて皆さんに認識していただきたいと思います。
本日は、順調なスタートを切った中期経営計画初年度の進捗と、その土台となっているIINO MODELの説明を通じて、私たちが諸先輩方より何を受け継いできたのかをお話ししました。さて、私たちは将来の世代のために何が残せるのでしょうか。私は、皆さんと共にこの受け継いだ財産を更に磨き上げ、より良い形で将来の世代に引き継いでいきたいと思っています。
そのためには、役職員一人ひとりが、ありたい姿や未来に向かってやりがいを感じながら業務に励むこと、そして、会社と共に成長していくことが重要です。座学も大切ですが、より多くの人とコミュニケーションを取ることを心掛けてください。話せば話すほど、相手からの信頼度も上がりますし、自分自身も相手からの刺激を受けて知見を積み上げ、社会人としても成長できます。
創業記念日を迎えるにあたり、諸先輩方が築いた財産をしっかりと受け継ぎ、将来のさらなる飛躍につなげる決意を新たにし、全社一丸となって中計の達成に向けて邁進していきましょう。
それでは、結びにあたりまして、
グループ全船の安全運航、所有ビルの安全無事故
グループ各社の一層の繁栄
グループ役職員の皆様ならびにそのご家族のご健勝とご多幸を
祈念いたしまして、私の挨拶とさせて頂きます。
ご清聴ありがとうございました。
以 上