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2025年 社長年頭あいさつ

2025年1月6日
飯野海運株式会社


飯野海運株式会社代表取締役社長大谷祐介は、1月6日に飯野海運グループ全役職員に向けて2025年年頭挨拶を行いました。


2025年 新年挨拶

皆さん、新年明けましておめでとうございます。2025年の仕事始めにあたり、全役職員の皆さんに新年のご挨拶を申し上げます。


まずは、昨年1年間、海運、不動産ともに大きな事故も無く、無事に過ごせたこと、業績も中期経営計画予想以上に推移したこと、いずれも大変良かったと思います。海陸一体となって、各持ち場でそれぞれ「安全の確保を最優先」、「成長に向けた挑戦」が功を奏しているものと考えます。


昨年、国内では、日経平均株価が34年ぶりにバブル期の最高値を更新し、史上初の4万円台を記録、円相場も同じく34年ぶりに一時1ドル=160円台に達しました。また、日本銀行は物価2%目標を安定的に達成できる見通しができたとして17年ぶりにマイナス金利政策の解除を決定しました。


一方、国外では11月に行われたアメリカ大統領選で、共和党のドナルド・トランプ元大統領が勝利し、ホワイトハウスへの返り咲きを果たしました。


また、2022年に始まったロシアによるウクライナ侵攻はいまだ出口が見つかっていません。更には、ガザ地区でのイスラエルとイスラム組織ハマスの戦闘も悪化し、当社の船舶も2024年初頭より紅海を通航せず喜望峰へ迂回している状況が続いています。昨年12月には、シリアでアサド政権が崩壊し、中東を取り巻く状況には益々注視する必要が出てきています。付近を航行する当社船の乗組員とそのご家族をはじめ、我々の心配は尽きることがなく、早期終息を祈るばかりです。


このような不安定で不透明感が増す状況が予想される中で、我々飯野海運グループは2023年に掲げ、進めている現中期経営計画「The Adventure to Our Sustainable Future」の2年目を終えようとしています。ここで昨年の進捗状況を「業績に関する数値目標」、「事業ポートフォリオ経営の推進」、「カーボンニュートラル達成に向けた取り組み」といった3つのポイントで振り返ってみたいと思います。


まず一つ目の「業績に関する数値目標」についてです。2024年度は、主力のケミカルタンカーの市況が引き続き高水準で推移したことやオイルタンカー、ガスタンカー、ドライバルクでもほぼ計画通りに推移したこと、また不動産部門も安定収益源として貢献することで、掲げているすべての財務数値目標を達成できる見込みとなっています。


次に二つ目の「事業ポートフォリオ経営の推進」と三つ目の「カーボンニュートラル達成に向けた取り組み」についてです。


まず事業ポートフォリオ経営のおさらいですが、当社の各事業を成長性と資本収益性の2軸で評価し、成長新規事業・主力事業・安定成熟事業に位置付けているものです。この各事業ポートフォリオへ、3年間で合計1,000億円の投資実行を計画しました。
この1,000億円の投資の内、600億円は脱炭素社会実現に向けて、燃料消費量や温室効果ガス排出量(GHG)削減に貢献する船舶ならびに不動産物件等、環境配慮への取り組みに投資することを掲げています。


この事業ポートフォリオ経営やカーボンニュートラル達成にむけた取り組みの成果として、昨年2月のアンモニア運搬船"Gas Innovator"の竣工から始まり、3月にはロンドンでエネルギー効率性を示す指標EPC(Energy Performance Certificate)で2番目に高い評価を獲得しているオフィスビル"111 Strand"を取得、6月には当社3隻目となるLPG 二元燃料主機を搭載するIce Class VLGC の造船契約締結、10月には本邦初となるメタノール二元燃料主機を搭載するVLCCの造船契約を締結、11月にはVLGC "Oceanus Aurora"にローターセイルの搭載が完了しました。また2025年度中にはエタン二元燃料主機を搭載するVLEC2隻の竣工も控えており、順調に投資を進めている状況です。


船舶投資だけではなく、LPG二元燃料主機搭載船のVLGC "Calluna Gas"の船舶管理をこれまでの外部管理委託から、インハウスであるIMS管理に変更し、新技術の取得を目的として日本人配乗を開始しました。今後も多種の二元燃料船の船舶管理に関わり、日本人をはじめとした当社船員を配乗し、新たな知見や技術を習得することで、当社にとって必要な海技の伝承に努めることを期待しています。これらの実現には、当社船員ならびに船舶管理に関わる全ての方たちの益々の尽力が必要となります。


しかしながら、全てが順調であるわけではなく、円安、物価高、資機材の高騰、新技術を搭載した環境対応への追加設備により、船価や不動産価格は空前の高水準が続いています。
特に自社により直接排出するGHG=スコープ1にカテゴリー分けされるケミカルタンカー等自主運航船の環境対策は抜本的な解決策が見出せない状況が続いています。荷主の理解も継続的に求めていく一方で、脱炭素投資促進のためInternal Carbon Price(ICP)の導入の研究も進めているところです。


その他の重点戦略としては、人的資本の強化を掲げています。
ある書物の中で人的資本について、こんなことが書かれていました。それは、

・企業経営における最終目的は「長期的に稼ぐこと、利益を上げること」である。
・通常の競争環境の中では、長期利益こそが最も誠実な顧客満足の指標であり、顧客に対して独自の価値を創出している証明である。
・人的資本は長期利益の源泉。生産設備に投資しても生産性の向上に上限があるが、人の場合、5倍、10倍のパフォーマンス向上も可能。ただ、反対に10分の1にもなりうるので、長期利益へのインパクトは大きい。
・経営者が儲かる商売を作り、成長させるために人的資本に投資する。

当社は中期経営計画で、職場・労働環境を整備し、多様な人材を確保、育成していく、そしてその能力を発揮できる機会を提供して、その成果を評価することで会社の業績向上のみならず従業員の自己実現を両立し、共に成長できる体制を目指すと謳いましたが、非常に通じるものがあったので、紹介させてもらいました。


さて、先程のパフォーマンス向上には「働きがい」を感じることも大切だと思います。皆さん、「働きがい」という言葉を聞いて具体的なイメージがわきますか?この言葉が具体的に意味するところは、「働きやすさ」と「やりがい」の両方が備わった状況を言うこともあるようです。「働きやすさ」に関する会社の取組みとしては、定期的な新入社員採用と専門性の高い業務にはキャリア採用を行い、増員を図っていること、在宅勤務制度やオフィスでのフリーアドレス化の導入、さらに事務所フロア増床や大々的なレイアウト変更なども実施してきています。


もう一つの「やりがい」についてはどのような意味を感じるでしょうか?
業務についての新たな知見を得て自己スキルが向上した際に感じるでしょうか?顧客の信頼を得て、結果、契約獲得をした際に感じるでしょうか?継続的に様々なプロジェクトに関わり、チャレンジをしている際に感じるでしょうか?自身が思い描いているキャリアビジョン「なりたい自分」になった際でしょうか?

個々人が感じる「やりがい」というのは、こういった日々の業務での達成感や目標に近づく過程を楽しむなど様々なものがあると思います。これらの「やりがい」「働きがい」がある会社は結果として企業価値の向上にもつながり、経済的価値・社会的価値の創造にもつながってくるのではないかと思います。


今年は現中期経営計画の最終年度となると同時に、2026年度からの新しい中期経営計画を策定する一年となります。
どのように「やりがい」をもって企業価値の向上につなげられるか、個人、各部、各社、各世代の皆さんで積極的に考え、話し合いましょう。

それでは、結びにあたりまして、
グループ全船の安全運航、所有ビルの安全無事故、
グループ各社の一層の繁栄、
グループ役職員の皆様ならびにそのご家族のご健勝と
ご多幸を祈念いたしまして、私の挨拶とさせて頂きます。


以上