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2025年 創業記念日 社長挨拶

当社は2025年7月1日に創業126周年を迎え、代表取締役社長 大谷祐介が6月30日に飯野海運グループ全社員に向けて下記の通り挨拶を行いましたのでお知らせいたします。

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明日7月1日に、126回目の創業記念日を迎えるにあたり、役職員の皆様に一言ご挨拶申し上げます。

2025年1月20日に発足した米国のトランプ新政権は、「米国第一の通商政策」を掲げ、様々な関税措置の導入を今現在進めており、世界経済や企業を取り巻く環境に大きな変化をもたらしています。「相互関税」の対象は約60の国や地域に対して適用されるとされており、実質的には米国に輸入されるほぼすべての品目に、最低でも10%の追加関税を課すことを掲げています。日本から米国向けの輸出のみならず、他国からの報復措置も相まって全世界的な景気後退や、グローバルサプライチェーンにも幅広い影響が出ることが懸念されています。当初4月9日に、この「相互関税」は課される予定でしたが、7月9日までの90日間は猶予期間として各国は対応に追われています。
トランプ大統領就任以降、経済面では世界的に不透明かつ不安定な状況が続いていますが、政治面においてもイスラエルとイランが軍事衝突にまで発展し、先日米軍がイランの核施設を攻撃するなど、中東情勢に更なる混乱を招いています。停戦合意には至ったものの、今後も予断を許さない状況が続くと思われます。
当社でも、アラビア湾内航行に際しては、乗組員、船舶並びに貨物の安全を最優先に、関係機関との連携を図りながら最新情報の収集を行い、各船舶の運航管理体制を最大限に強化している最中です。

次に、当社の中期経営計画「The Adventure to Our Sustainable Future」の進捗についてお話しします。
中計1年目であった2023年度に続き、2年目の2024年度は関係会社や海外拠点、そして乗組員を含むグループ全役職員の努力により、計画を大きく上回る成果を上げることができました。
まずは重点戦略の経済的価値の創造についてですが、財務数値目標として掲げていた経常利益、ROE、ROICなどは全て目標を達成することができました。前年度から続く好調な海運市況や、円安に推移した為替相場が当社にとって追い風となったこともありますが、好不況の波にとらわれずに、長年にわたり顧客と良好な関係を築いてきたことや、現状に甘んずることなく新規開拓を進めた結果が、好結果を掴む一因となったのでは、と思います。また、事業ポートフォリオ戦略に基づく成長投資も順調に進んでいます。具体的には、海運業では荷主と造船所と協働で根気強く進められたメタノール2元燃料VLCCへの投資等を実行しました。事業ポートフォリオ戦略では、中計3年間で1000億円の投資を計画していますが、現在までに、計画の85%を消化し、目標達成まで、あと一歩というところまで進捗しています。

次に、社会的価値の創造の進捗についてです。
2050年までのカーボンニュートラルに向けたGHG削減への取り組みでは、先に申し上げたメタノール2元燃料VLCCを成約しました。また、次世代燃料船への投資を促進する仕組みとして、インターナルカーボンプライシング(ICP)を導入しました。これは次世代燃料を利用することにより、温室効果ガスの減少に貢献できる資産取得に対して、インセンティブを与えるといった仕組となります。今後の更なる投資に繋げるべく、このような対応も進めていきます。
また、「人権尊重への対応」についても、全社を挙げて継続的に取り組んだことで、国際的なサステナビリティ評価機関であるEcoVadis社の評価において、昨年の「ブロンズ」から、上位15%以内の企業に与えられる「シルバー」評価を獲得しました。

以上の通り、中計の2年目は、前年に引き続き順調に進捗しました。
この結果、稼ぐ力の向上に向け、各組織で継続的に取り組みを行い、高水準の利益を上げることで財務基盤は強化され、新たな投資にも積極的に取り組むことができる状況が整いました。

一方で、今後もすべて順風満帆というわけではありません。
中計最終年の2025年度については、好調だった市況も若干陰りを見せ始めており、現在の見通しでは当初の財務目標に若干届いておらず、収益を上げ、目標達成するために全力で取り組んでほしいと思います。

次に、現中計でも重点戦略の一つである「人的資本」について少し話をしようと思います。昨今様々な場面で、経営戦略には人的資本経営が重要だ、それを実現させるためには従業員エンゲージメントの向上が必要不可欠だ、といったような言葉を皆さんも耳にするかと思います。この言葉から正確なイメージがパッとわく社員の方々はどれくらいいるでしょうか。人的資本経営とは、財務諸表上では表現されることのない人材を「資本」として捉え、その価値を最大限に引き出すことで、中長期的な企業価値向上につなげる経営のあり方です。近年では、インフレ、金利、為替といった経済の不確実性や、脱炭素や人権への対応、自動化技術の普及や生成AI・DXの加速によるテクノロジーの急速な進展、そして地政学的リスクの増大といった様々なビジネス環境の急激な変化により、企業は従来の組織体制では持続的な経営を行うことが難しくなってきています。
そのため、当社はIINO VISION for 2030として、「時代の要請に応え、自由な発想で進化し続ける独立系グローバル企業グループを目指します」を目標に掲げており、国内外問わず様々な舞台で自律的かつ柔軟に事業を展開することで、急変する環境に適応しながら企業価値の向上に取り組んでいます。その企業価値の向上の基盤となるものが、人的資本の強化だと考えています。
我々飯野海運グループは現在までに人的資本強化の基礎となる働きやすい環境づくりに力を入れてきました。在宅勤務制度やフリーアドレス化に始まり、時差出勤制度や、育児や介護といった家庭と仕事の両立等の柔軟な働き方の促進や、福利厚生の拡充も行ってきました。
職場環境では、2022年からオフィス増床を機に全面リニューアルを実施し、この5月にはすべての工事が終了し、新たなオフィスに生まれ変わりました。執務エリアやラウンジエリアでは、従業員同士のコミュニケーションの促進や、リフレッシュ、社内イベントを開催するなど、業務を超えたコミュニケーション機会の創出のための仕掛けが様々に詰まっています。その評価はこれからになるようですが、業務効率化に向け、是非有効に利用してほしいと思います。私もラウンジエリアを利用して、皆さんとのコミュニケーションを図る機会を作りたいと年始にお話ししましたが、未だ実現できていません。今後、その機会を作るようにしますので、今しばらくお待ちください。
これらの対応は、主に人的資本の強化へ向けた環境づくりと考えています。これからは「自由な発想で進化し続ける独立系グローバル企業グループ」であり続けるために、当社がどのような人材戦略を描いていくのかを次の中計に向けて、より深く議論していきたいと考えています。そのうえで、次の中計は人材戦略と成長戦略を連動させたいと考えています。そのため、その戦略に沿った人材ポートフォリオを改めて整理し、各人の評価をきちんとした上で、海運・不動産で安全・安心を提供するプロフェッショナルな人材、自律的に課題を発見・提案できる人材、自由な発想と挑戦意欲を持つ人材、様々な分野で専門的知識を有する人材、また物事を俯瞰的に見ることのできる人材等、当社が独立系グローバル企業であり続けるための人材イメージを描きたいと考えています。
また、現在の海外短期研修や乗船実習、自発的に参加している外部座学研修に加えて、経営目線、従業員目線両方から今後必要となるであろう人材育成プログラムを現状のものから進化させること等で、従業員皆さんのキャリアプランの支援も行っていきます。
当社が明日7月1日に126周年を迎えられるのは、飯野グループのカルチャーである機動力を生かし、年齢層は問わず、先進的な取り組みに挑戦してきた人材、まさに人的資本によるものです。今後更に当社が発展していくために、更なる人的資本の強化を目指していきます。

今年度は、現中計の最終年度であり、次期中計策定にあたる重要な年となります。既に、いくつかの部門の今年度のミッションには、次期中計関連の検討材料が織り込まれています。次の中計策定に関わるのは、従来の経営陣や管理職のみではなく、異なる部署・立場の皆さんが縦横関係なく、意見交換を行い、議論を重ねていくことも重要なプロセスの一つとして考えたいと思っていますので、皆さんも飯野グループの一員として、当社の未来を考え、一緒に議論させてもらいたいと思います。

それでは、結びにあたりまして、
グループ全船の安全運航、所有ビルの安全無事故
グループ各社の一層の繁栄
グループ役職員の皆様ならびにそのご家族のご健勝とご多幸を
祈念いたしまして、私の挨拶とさせて頂きます。
ご清聴ありがとうございました。 

以 上