シンガポールオフィスレポート

singapore office report

世界でも有数の海運の拠点シンガポールにある、飯野海運の現地法人のオフィスを訪ねました。
仕事について、海外での生活について、現地で働くスタッフの声をレポートします。

海運の重要拠点、シンガポール

近年急速な経済発展を遂げ、経済の中心地となったシンガポール。東京23区と同程度の小さな国土面積の国ながら、既に東京を凌ぐ世界の金融センター・外国為替市場としての地位を築くまでに成長しています。
シンガポールはマラッカ海峡の南東端(シンガポール海峡)に位置しており、古くから太平洋とインド洋とを結ぶ海上交通上の要衝として栄えてきました。現在では世界の港湾取扱貨物量ランキング第2位(2016年、国土交通省)を誇り、シンガポールは海運においても世界の最重要拠点の一つです。そして海運の重要拠点ということは、海運に関わる人々も多く集まるということ。シンガポールはロンドンなどと並び、いわば「海運ビジネスセンター」としても重要な都市となっています。海運を生業とする飯野海運にとって、シンガポールは非常に馴染み深い国であると同時に、海運事業戦略上の重要性はますます大きくなっており、飯野海運は2002年にシンガポール現地法人を設立しました。

シンガポール経済の中心地

Robinson Road はシンガポールの中心街にあり、超高層ビルが建ち並ぶまさしくビジネスの中心地で、日本企業の現地法人はもちろん、世界各国の企業の拠点が集中しているエリアとなっています。道行くビジネスパーソンの国籍も様々で、さながらニューヨークやロンドンの金融街といった雰囲気です。
この Robinson Road に面するMRT(地下鉄)Tanjong Pagar 駅のすぐ側に建つ超高層ビル「Capital Tower」内に、飯野海運のシンガポール拠点が居を構えています。

シンガポール経済の中枢、Robinson Road付近。超高層ビルが建ち並ぶ。

最寄り駅となる、地下鉄 Tanjong Pagar 駅。

飯野海運のシンガポールオフィスが居を構える高層ビル「Capital Tower」。

「Capital Tower」のエントランス。多国籍のビジネスパーソンが行き交う。

庶民の食卓

シンガポールでは、食事は自炊ではなく外食が一般的。ホーカー(ホーカーズ、ホーカーセンターとも)と呼ばれるフードコートが、大小問わず国内のいたる所に存在します。シンガポールは中華系、マレー系、インド系を中心とした多民族国家であり、加えて日本人はもちろん欧米系の外国人も多数居住しているためホーカーでは様々な国籍の料理が楽しめます。物価が非常に高いとされるシンガポールにおいてリーズナブルな価格で料理が提供されることから、食事はいつもホーカーでという人も少なくありません。
飯野海運のシンガポール拠点がある Robinson Road の通り沿いにも高層ビルの間にホーカーがあり、多くのスタッフがランチや夕食を楽しんでいます。

Robinson Road 沿いにあるホーカー「Lau Pa Sat」。お昼時やアフターファイブには、多くの人々で賑わう。

多国籍な環境で、自分を磨く

飯野海運のシンガポール現地法人は、Capital Tower の13階にあります。スタッフは総勢35名、そのうち17名は飯野海運から出向している日本人スタッフです。
現地スタッフは地元のシンガポール人に加え、その周辺国出身のメンバーで構成されています。そのため、社内の公用語は当然ながら英語。飯野海運では日本国内でも仕事で英語を使う場面は多々ありますが、ここシンガポールオフィスでは日常的なコミュニケーションも英語で行われていますので、実践的な英語力を強化したい人には理想的な環境です。また、様々な文化や考え方に常に触れることで、自分自身のキャパシティを広げ柔軟な思考力を養うことができるのも、この環境ならではといえるでしょう。

オフィスに入ると、港湾や海流、船の運航状況が表示されるモニターが設置されている。

特注で製作したタンカーの模型。内部構造まで忠実に再現されているのは珍しいそうだ。

お互いの顔が見える、明るく開放的な執務エリア。

会議室の一つ。日本や各国の拠点とつながる通信設備が完備されている。壁にはタンカーの写真や海図なども。

応接室。窓からはシンガポールの町並みが一望できる。

社員がくつろぐリフレッシュルーム。コミュニケーションの促進のため、執務エリアの中間に配置されている。

海上交通の要衝を望む

マレー半島の南端に位置するシンガポール。高層ビルから眺めると、シンガポール海峡がすぐ目の前に広がります。海峡を航行する、あるいは港湾に停泊する数多くの船舶を望む事ができ、この地が海上交通の要衝であり、海運の一大拠点であるということが実感できます。

voice of staff

多様な価値観とともに、海運の最前線で。
J.I.(出向者)
Chartering & Operation Manager

シンガポールオフィスの位置づけと役割

シンガポールでは、飯野海運のケミカルタンカー事業において、ケミカル船の集荷・運航を行っています。もちろん日本の本社にもケミカルタンカー部門はありますが、日本では船を作って(あるいは借りて)お客さまに貸すというビジネスが中心であり、運航業務であるオペレーションを行っているのはここシンガポールとなります。その理由としては、やはりシンガポールが海運の最前線である、という点にあります。海上交通の要衝であるということはもちろん、ロンドンなどと並んで海運に関係する人々が集まる場所でもあるからです。常に新しい情報が発信されるシンガポールは、オペレーション上でもビジネス上でも最適の地といえるでしょう。
さらに、グローバルにビジネスを展開する飯野海運にとって、ロンドン、ドバイ、ヒューストンといった他の海外拠点と同様に、ここシンガポールは飯野海運の世界に向けての窓口としての役割もあります。オペレーションや新規ビジネス開拓の拠点としてだけではなく、飯野海運のPRや日本の本社に向けた情報の発信源としての役割も担っているわけです。
そしてもう一つ、個人的にはとても大切な点だと考えているのですが、シンガポールが人材育成においても重要な拠点だということです。多国籍な環境でありながら非常に生活がしやすいシンガポールは、グローバルビジネスの経験を積むには最適な場所だといえるでしょう。実際、シンガポールに赴任したスタッフからも、「世界が広がった」という声を聞くことも多々あります。

今後の課題

その一方で、私たちはまだ日本企業だなという印象も持っています。例えば欧米企業のシンガポール現地法人ですと、本国から出向している社員は一名のみであとは全員現地スタッフというケースも多々ありますので、欧米人も含めもっと多彩な国籍の人材がいれば、その分より多様な価値観や考え方が得られるだろうなと感じます。そういった意味で、もっともっとグローバル化できたら良いなと思っています。

海外で活躍するには、何が必要か?

海外で働いてみたいとお考えの方も多くいらっしゃると思います。では海外で働くために必要な能力は何かと問われれば、決して英語力が第一ではないと私は思っています。もちろん英語が役立つ事は事実ですが、もっと重要なのは異なる文化や考え方を理解しリスペクトできるか、という事だと私は考えています。そういった文化や考え方の違いを理解し、リスペクトし、それを楽しめる方にぜひ活躍してもらいたいと思います。

H.C.
Chemical Operation Division
Assistant Senior Manager

現在の仕事内容

これまで船舶代理店やブローカーといった海運業に携わってきたのですが、運航により直接関わる仕事がしたいと考え、この会社に転職しました。
現在は、ケミカルタンカーのオペレーション部門の監督業務を担当しています。若い運航担当者を中心としたフォローアップはもちろん、部門が管理しているタンカーのトラブル対応の統括など、全体的な視点で管理を行っています。

仕事のやりがい

飯野海運は海運業界内では定評のある会社でしたし、またスタッフとも顔見知りだったので、非常に信頼ができる会社という印象を持っていました。今は望んでいた仕事でとてもチャレンジングな環境なので、自分の成長につながっていると実感しています。

職場環境や働きやすさ

仕事においては何よりも人間関係が大切だと考えていますが、ここでは全員が助け合える関係ができていて非常に良好です。
また日系企業らしさや日本のカルチャーも色濃く残っているので、私にとってはその点は良いところだと考えています。日本で実施された研修にも参加したのですが、本社の方々もとても好印象でしたよ。

K.Y.(出向者)
Chemical Operation Division
Assistant Operation Manager

現在の仕事内容

ケミカルタンカーの運航業務を担当しています。具体的には、決まったお客さまのいる専用船1隻と自社で集荷・運航を行う自主運航船3隻の計4隻を担当し、安全で効率的かつ経済的に運航できるように陸上からサポートする仕事です。当社のケミカルタンカー事業においては、お客さまの大半が海外の企業になります。そのため、ケミカルタンカーの集荷・運航においては、シンガポールが最前線なんです。東京のオフィスでは会社全体を見渡す管理部門で船に携わっていましたが、その時に感じていたものとは違ったダイナミックかつグローバルな海運業そのものを体感しています。

仕事のやりがい

中東〜東アジア間を航行する船の多くはシンガポールを通ります。担当船が荷役や補油で寄港することも多く、乗船している船長はじめクルーの皆さんと頻繁に顔を合わせることができるので、普段の業務でもコミュニケーションが取りやすくなるのは大きなメリットですね。また、やはり自分が担当する船を訪問する機会が多い分、海運業に携わっているんだというリアリティを感じられるのも、シンガポールならではだと思います。

職場環境や働きやすさ

シンガポールは小さな国なので、自宅が職場から遠いといってもたかが知れています(笑)。通勤に時間がかからないのは嬉しいですね。また多民族国家でもあるので、多様な文化や考え方に触れることができて、とても刺激的です。

S.H.(出向者)
Chemical Operation Division
Assistant Operation Manager

現在の仕事内容

ケミカルタンカーのオペレーションです。シンガポールはケミカルタンカーの運航業務を行っているオフィスですので、主にタンカー毎に担当者が決まっています。
私は入社以来、東京でケミカルタンカーに関わる仕事をしてきました。飯野海運において自主運航を行っているのがケミカルタンカー事業とドライバルク事業なので、ぜひ入社以来関わりのあったケミカルタンカーのオペレーションに携わってみたいと思い、シンガポールへの赴任を強く希望しました。

仕事のやりがい

実際にオペレーションを担当してみると、現場では様々な事が起こっているんだなと実感しました。もちろん万全の体制で臨んでいますので、安全な運航に支障を来すほどのトラブルはそうありませんが、毎日のように色々な出来事があるので、いくら経験を積んでも常に新しい発見があります。やればやるほど学ぶことができるんです。何年もキャリアを積んだ人でも、同じような事をおっしゃいますね。

職場環境や働きやすさ

日本人ではないスタッフも大勢いますのでコミュニケーションは英語が基本となりますが、英語は日本語に比べてシンプルな言語なので、むしろ英語の方が自分の考えをストレートに伝えやすいと思うようになりましたね。

R.K.(出向者)
Chemical Chartering Division
Chartering Manager

現在の仕事内容

チャータリングを担当しています。船の積み荷を探し荷主と交渉をする、ごく簡単に言うと営業職のような仕事です。海運の営業にもいくつか種類があり、例えばバスのように決まったルートを定期就航する船への積み荷を探す営業もあれば、タクシーのように自由に運航する船への積み荷を個別に探すような営業もあり、私の場合は後者です。
飯野海運のケミカルタンカー事業に関しては、チャータリングの仕事はシンガポールで行っています。その理由としては、顧客や関係者がシンガポールに多くいるためです。シンガポールは地理的に貿易の中継地点として栄えており、多くの海運会社がシンガポールに進出しています。

仕事のやりがい

私は学生時代シンガポールに留学していたので、いつかシンガポールで働いてみたいと思っていました。また海運業と聞いてイメージするような、世界を相手に海運の最前線でも仕事をしてみたいとも思っていました。その意味で、今は夢が一つ叶ったと感じています。今まで運んだことのない荷物を探したり、初めての航路を開拓したりと、刺激的な毎日です。

職場環境や働きやすさ

日本とあまり変わらない環境で、不便は感じていません。職場までの交通の便も良く、職場環境は良いと感じています。

R.K.
Chemical Chartering Division
Chartering Manager

現在の仕事内容

以前はインドネシアの海運企業に勤めていて、シンガポールとジャカルタでケミカルタンカーとガスタンカーのチャータリングを担当していました。その後、やはり海運が好きだったのでこの会社に入社しました。日系企業は初めての経験ではありましたが、海運関係者の間では飯野海運は運航実績や安全性・品質面で昔から有名でしたので、特に不安はありませんでした。現在は前職の経験を活かして、ケミカルタンカーのチャータリングを担当しています。

仕事のやりがい

海運業は変化の連続で、非常にダイナミックな業界だと感じています。新しいクライアント、新しいトレード、世界の経済状況など、常に変化があり新しい発見の毎日です。経験を重ねても日々新しい学びがあり、成長に終わりがない仕事だと思っています。

職場環境や働きやすさ

以前働いていた海運企業に比べて、IINOのメンバーは「チームが一つになって前に進んでいく」という意識が強いと思います。このチームワークの良さは日系企業ならではの良いところかもしれませんし、こういった点は私の性格にも合っているように感じています。

K.Y.(出向者)
Marine Division
Manager

現在の仕事内容

私は陸上勤務になるまで海上で勤務し、三等機関士から二等機関士になり、計6年間船の上にいました。飯野海運では海上職も陸上勤務を経験することになっており、私は現在、運航支援・運航の最適化・情報収集といった陸上での業務に携わっています。オイルやガスと比べて特にケミカルは貨物の種類が多く、考慮しなければならないこともとても多いので、その点は大変ですね。
海上職が陸上から船をサポートする最大のメリットは、船上のことをよく知っているという点なので、やはり経験に基づいた判断や解決策の提示が求められます。また、陸上職スタッフのサポートやアドバイスを求められることも多いですね。

仕事のやりがい

例えば船の燃料消費が多い場合に運航データを分析して改善策を提示した結果、燃費改善につながったときなど、船上での知識や経験をフルに活かすことで成果が出せると本当に嬉しいですね。海上職だからこそのやりがいです。

職場環境や働きやすさ

メリットは、家が近くて満員電車での通勤がないことです(笑)。
私はこの後海上勤務に戻る予定なので、陸上勤務の経験を活かして、一等機関士、そして機関長へとキャリアアップしていきたいと思います。

J.G.
Administrative Division
HR & Admin Manager

現在の仕事内容

もともと日本文化が好きで、以前も日系企業のシンガポールオフィスで人事担当として働いていました。現在も、総務や人事を担当しています。各種規約の作成、コンプライアンスの管理、福利厚生プログラムの実施、さらには現地スタッフの採用業務など、総務・人事の領域でオフィス全体のマネージメントをサポートする幅広い業務に携わっています。

仕事のやりがい

人材は企業にとって重要なものです。社員をサポートし、最高のパフォーマンスを発揮できるような環境を構築することは、非常に価値のある仕事だと感じています。一方で、人材マネージメントや人材開発の領域は、業界を超えてネットワークを構築でき、ずっと学び続けることができる分野だと考えています。

職場環境や働きやすさ

私がこれまで働いてきた企業以上に、この会社はオープンで自分の考えを言いやすい職場だと思います。様々な問題を解決しより働きやすい環境を構築することで、皆さんに喜んでもらえることがとても嬉しいですね。スタッフの皆さんとも有意義で友好な関係を築くことができていると思うので、とても楽しいです!

オフタイムも充実

近年、シンガポールではテーマパークやショッピングセンター、高級ホテルなどが次々と建設され、観光客からも注目を集めています。マーライオンやマリーナベイ・サンズをはじめ、セントーサ島やナイトサファリ、ガーデンズ・バイ・ザ・ベイなどが有名です。
一方で、チャイナタウン、アラブストリート、リトルインディアなど、多民族国家ならではのエリアも人気で、庶民が通う様々な国籍の美味しいレストランを発掘するといった楽しみもあります。

シンガポール観光の定番マーライオンも、飯野海運のシンガポールオフィスのすぐ近く。

飯野海運のシンガポールオフィスがあるビジネス街の夜景。

新たな名所、屋上プールのある高層ホテル、マリーナベイ・サンズ。

外国人観光客で賑わう、シンガポール側沿いの繁華街クラーク・キー。

チャイナタウンには美味しいレストランが多数軒を並べる。

アラブストリートにあるイスラム寺院、サルタン・モスク。

リトルインディア(インド人街)には美味しいカレー屋さんがたくさん!

ファッションとショッピングの街、オーチャード。

※記事の内容は、取材当時(2018年10月)のものとなります。