
石油エネルギーのほぼ全量を海外からの輸入に頼っているわが国にとって、大型原油タンカーによる原油の海上輸送はまさに生命線といえます。
飯野海運グループの大型原油タンカーの歴史は1929年の「第一鷹取丸」竣工に始まり、1931年にはわが国初となる本格的な外航大型原油タンカー「富士山丸」を建造しました。以来、大型原油タンカーによる原油の海上輸送のパイオニアとして、一時はわが国最大の大型原油タンカー船隊を有しており、『タンカーの飯野』と称されました。
現在は、原油の海上輸送の主力である VLCC(Very Large Crude Carrier)と呼ばれる30万重量トン級の大型原油タンカーを中長期の用船契約に投入し、顧客のニーズに応じた原油輸送=石油エネルギーの安定輸送に貢献しています。
原油の海上輸送において、ひとたび事故が発生し積荷が海上に流出すると、海洋およびその周辺環境に甚大な被害を及ぼします。こうした惨事を回避するため、船体のダブルハル化(船体の外壁が損傷しても積荷が流出しないよう、外壁を二重にした構造とすること)が義務付けられておりますが、飯野海運グループはこれにいち早く取り組み、2002年には、運航する大型原油タンカー全船のダブルハル化を実現しております。
2020年1月から適用開始となったSOx(硫黄酸化物)規制への対応として、2020年3月竣工の5代目「富士山丸」には当社グループで初めてSOxスクラバー(脱硫装置)を搭載。その後も環境負荷低減への取り組みを進めると同時に、最新鋭の技術により推進性能向上と低燃費を目指した「昇邦丸」が2020年9月に、「洋邦」が2021年1月に竣工しました。
2024年12月には「富士山丸」に大気観測装置を搭載し、国立環境研究所が行う温室効果ガス(GHG)観測への協力を開始。
また、2027年10月には本邦初となるメタノール二元燃料焚きVLCCが竣工予定です。本船は二酸化炭素(CO2)、硫黄酸化物(SOx)、窒素酸化物(NOx)、粒子状物質(PM)などの船舶由来の大気汚染物質を有意に低減します。引き続き厳しくなる環境規制に対応し、環境を意識したVLCC船隊の刷新と増強に取り組んでいきます。
安全運航/安全航海には、最新鋭の技術革新を組み入れるだけでなく、豊富な経験によって培われた運航ノウハウ及び船舶管理等が要求され、顧客には勿論、他グループの他船種にも継承及び展開されております。
今後も、石油エネルギーの安全かつ安定的な輸送に携わって参ります。
