環境

TCFD提言への賛同

気候関連財務情報開示タスクフォースの提言への賛同

サステナビリティへの取組みを推進していく上で、気候変動がもたらす事業へのリスクと機会について、その分析と対応を強化し、関連情報の開示拡充を進めるため、当社グループは、2021年7月に気候関連財務情報開示タスクフォースの提言(以下、「TCFD提言」)に賛同を表明しました。

TCFD(Task Force on Climate-related Financial Disclosures)は、G20財務大臣および中央銀行総裁の意向を受け、金融安定理事会(FSB)が設置した作業部会のことです。気候変動がもたらす「リスク」および「機会」を把握し、開示することを狙いとした提言を公表しています。
シナリオ分析の実施

当社グループは、TCFD提言に基づき、「2°Cシナリオ」と「4°Cシナリオ」について、それぞれの将来の世界観を踏まえ、海運業における重要なリスクと機会を抽出し、項目を特定しました。今後は、「1.5°Cシナリオ」についても分析を行う予定です。

海運業におけるシナリオ分析

これからの脱炭素社会への移行に伴い、主要貨物の一つである化石燃料の海上輸送需要が低下していくことを見据えて、当社グループでは環境負荷低減に資するクリーンエネルギーの輸送や次世代燃料船への投資にも積極的に取組むべく、戦略を策定していきます。

2つのシナリオ(2°Cシナリオと4°Cシナリオ)が想定する世界観および当社グループの海運業における重要なリスクと機会

  2°Cシナリオ 4°Cシナリオ
脱炭素社会への移行に伴う社会変化が事業に影響を及ぼすシナリオ 気候変動緩和策が奏功せず、成り行きで温暖化が進化した状況が事業に影響を及ぼすシナリオ
外部シナリオ

IEA、World Energy Outlook 2020

  • 持続可能な開発シナリオ(SDS)など

IEA、World Energy Outlook 2020

  • 公表政策シナリオ(STEPS)など
想定する世界観 今世紀末までの平均気温の上昇を2℃未満に抑え、持続可能な発展を実現させるために、野心的な政策や環境技術革新が進められる。

【政策・規制】
  • 気候変動対策と経済成長の両立政策
  • グローバルでのカーボンプライシングとカーボンプライス上昇
  • IMOによる環境規制のさらなる強化
【経済・市場】
  • モーダルシフトの進展
  • 化石燃料から再生可能エネルギーへの移行の進展
  • 顧客企業による脱炭素サービスの選好
【技術】
  • 次世代船舶、次世代燃料の普及
パリ協定に則して各国が目標達成に向けた政策を実施するも、各国の協調、環境技術開発、エネルギー転換等が不十分なものとなり、今世紀末までの平均気温が4℃程度上昇する。

【政策・規制】
  • 自国の経済成長優先
【経済・市場】
  • グローバルでの著しい経済成長
  • 化石燃料依存、化石燃料価格の高騰
【環境】
  • 風水災の激甚化、気象現象の両極端化
  • 海面上昇、気温・水温上昇などの慢性的変化の加速
2°C・4°Cの世界で顕著となる主なリスク
  • 化石燃料の需要減による売上の減少
  • カーボンプライシングによる費用の増加
  • 燃費規制対応による船舶建造費の増加
  • 燃費規制対応(次世代燃料使用)による燃料費の増加
  • 原油価格上昇による燃料費の増加
  • 荒天遭遇時の船体・機器損傷による修繕費の増加、航路変更による運航費の増加
  • 気温・海水温上昇に伴う船舶の修繕費等の増加
  • 農作物の収量減少による売上の減少
2°C・4°Cの世界で顕著となる主な機会
  • クリーンエネルギー源(水素、アンモニア、バイオ燃料等)の需要増による売上の増加
  • 洋上風力発電に関する物資輸送、CCS (CO2回収・貯留)でのCO2輸送等に関する事業機会の創出
  • 運航の低炭素化による運航費の削減
  • GHG排出係数が小さい化石燃料(LNG等)の需要増による売上の増加
  • 海面上昇に伴う沿岸の防災工事に関する物資輸送の需要増による売上の増加
不動産業におけるシナリオ分析

不動産業については、所有するビルに対し、非化石証書付電力の購入、照明のLED化、太陽光パネルの設置、設備機器の省エネ運用など、温室効果ガス(GHG)排出量削減に向けた取組みを既に進めています。

これからの脱炭素社会への移行に伴い、オフィスビルの更なる省エネルギー化を検討していきます。

2つのシナリオ(2°Cシナリオと4°Cシナリオ)が想定する世界観および当社グループの不動産業における重要なリスクと機会

  2°Cシナリオ 4°Cシナリオ
脱炭素社会への移行に伴う社会変化が事業に影響を及ぼすシナリオ 気候変動緩和策が奏功せず、成り行きで温暖化が進化した状況が事業に影響を及ぼすシナリオ
外部シナリオ IEA、World Energy Outlook 2021
  • 持続可能な開発シナリオ(SDS)
  • 2050年ネットゼロエミッション実現シナリオ(NZE)など
IEA、World Energy Outlook 2021
  • 公表政策シナリオ(STEPS)など
想定する世界観 今世紀末までの平均気温の上昇を2℃未満に抑え、持続可能な発展を実現させるために、野心的な政策や環境技術革新が進められる。

【政策・規制】
  • 建物のエネルギー性能に関する規制強化
  • 企業に対する情報開示義務の拡大
  • グローバルでのカーボンプライシングとカーボンプライス上昇
【経済・市場】
  • 環境、健康、快適性を重視する企業による環境認証取得ビルの選好
  • 電源構成の変化(再エネ電力への移行)による系統電力の排出係数の減少と電気代の上昇
【技術】
  • 建物の省エネに関する環境技術の進展
パリ協定に則して各国が目標達成に向けた政策を実施するも、各国の協調、環境技術開発、エネルギー転換等が不十分なものとなり、今世紀末までの平均気温が3~4°C程度上昇する。

【政策・規制】
  • 建物のエネルギー性能に関する規制の形骸化
【経済・市場】
  • 化石燃料依存、化石燃料価格の高騰
【技術】
  • 環境技術開発投資の伸びの停滞
【環境】
  • 風水災の激甚化、気象現象の両極端化
  • 気温・水温上昇等の慢性的変化の加速
2°C・4°Cの世界で顕著となる主なリスク
  • 建物の省エネ化に関する建設・改修コストの増加
  • 立地エリアにおいて保有ビルの環境性能等が劣後した場合、賃料、入居率、資産価値の下落
  • 風水害の激甚化による設備投資コストや操業コストの増加、収益減少
2°C・4°Cの世界で顕著となる主な機会
  • 環境認証取得ビルの賃貸収入の増加
  • 保有ビルの省エネ化・創エネ化による光熱費の圧縮
  • 環境技術の進展による省エネ・創エネ工事費用の抑制
  • ビルの計画的な補修・補強によるレジリエンスの向上
  • 災害に強い物件の需要の増加による賃貸収入の増加