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船内ちょこっと事件簿
海上職を志望する方はお分かりかと思いますが、海の上は想定外のハプニングが稀に起こります。自然を相手にしている側面もあり、現場での判断やイレギュラーな業務もあるのが正直なところです。ここでは、そんなちょこっとハプニングと、それを乗り越えたお話を少しだけ紹介します。
01
デビュー2隻目の緊張との戦い。
2020年入社 海上職・航海士 S.I
海上職・航海士として新卒で入社し、記念すべき初航海はさまざまなことが初めてで、航海期間も短く、周りの人も全てを教えてくれる環境で、ほとんど研修というような状態だったので、勉強になったのはもちろんですが、なんとなく「お客様」感がありました。しかし、初航海の最後で先輩から「次は○○(名前)にかかってるぞ」と冗談を言われ、それを鵜呑みにしてしまった私は、2隻目の航海前に尋常じゃないほど緊張してしまいました。前日もよく眠れず、何度も何度も自分の仕事のシミュレーションを行い、ミスのないように準備をするほど。いざ、乗船した時、周りを見渡してみると、自分の上司以外は話したことのない人がほとんどで、どんな人なのかわからず、さらに緊張が増してしまい、側から見ると恥ずかしいくらいにガチガチだっただろうなと思います。
そんな私を見かねてなのか、2隻目の新人にはみんなそうしてあげるのかわからないですが、その時の上司がとても気にかけてくれたことを覚えています。仕事の際はご自身の経験を基に助言をくださり、仕事以外の時間の過ごし方もたくさん教えてくれました。私が知らない人たちとの最初のコミュニケーションにも間に入っていただき、夜にみんなでご飯を作って食べたり、ゲームをしたり、寄港した街で買い物をしたり、仕事の時間とプライベートをしっかり分けて、その両方の過ごし方を教えてくれた上司に今では感謝しきれないです。
02
全員が青ざめる中、船長の一言。
2018年入社 海上職・航海士 K.O
日本へ寄港する機会が2カ月に1度しかない船では、内地での私物注文が船員みんなの一番の楽しみの一つです。私物注文とは、食品手配業者へ、好きな趣向品を注文、手配してもらうものなのですが、ある船内でその後の航海を揺るがしかねない大事件が起こりました。 「美味しい、新鮮なものを食べたい!」と船長が生きたサザエをご褒美に私物で注文していました。現物を見て、舌なめずりをしながらチャンバー(船の食料保管冷蔵庫)へ保管した船長。嬉しそうな船長の顔をみんな見ていて、何かほっこりした船内でした。 ・・・・しかし、その日の夕食の一品に豪華なサザエ料理が。。。 どうやら船長の私物注文の一部始終を知らない料理長が、誤ってチャンバーに入っていたサザエを晩ご飯にしてしまった模様。 船長は、サザエが届く前から調理方法などを調べて楽しみにしていたのを料理長以外はみんな知っています。 それを伝えられ、青ざめる料理長他、乗組員でした。なんとなく空気もどんよりとしたものに。
その時、船長から一言。「俺の奢りだ、召し上がれ」。 船長の男気に惚れ直した夜でした。普段から私物を皆にふるまってくださる船長だからこそ、船員を労わる気持ちを持ってくださるのかなと思います。船長だけでなく、飯野海運では「みんなで」という気持ちの強い方が多い気がします。
上司のコメント
楽しみにしていたので残念な気持ちもありましたが、日ごろから皆に支えられ成り立っているのが船。 良いきっかけだと思い、提供することにしました。 皆の「美味しいです」の一言と司厨長の笑顔が良い思い出になりました。
03
ドラム缶風呂で初日の出を拝もう!
盛り上がる我々と冷静な船長。
2015年入社 海上職・航海士 H.M
日常生活においてごく当たり前に享受できるものも、かたや船上においてはそうもいかないことが多いです。その代表例がお風呂。場合によっては浴槽の無い船もある船上。そのような時、切に湯船へ浸かりたくなるのです。そんな船内が正月を間近に控えたある日、一等航海士と一等機関士が思い立ちドラム缶風呂を作ろうと言い出しました。どうやら風呂に浸かりながら初日の出を拝もうという算段らしく、この素晴らしい提案にいつも以上に沸き立つ船内。みんなの協力もありドラム缶風呂を用意することに成功し、あとはご来光を待つのみ!と満足気な表情の一同でした。
しかし待てど暮らせどご来光は現れず・・・次第に明るくなる上空。 これはおかしい、誰もがそう思い始めたとき、船橋の船長より「反対舷だぞ?」との一言。 あいにくお風呂に浸かりながらのご来光は叶いませんでしたが、初日の出には間に合うことができました。 その後、航海士失格との烙印を押されたのは言うまでもありませんが、、、 正月であろうと浮かれない、船長という重鎮の存在がトラブルを未然に防ぐ要因になりました。 とはいえドラム缶風呂をやる!という無邪気さを忘れないのが飯野海運船員の魅力だと思います。
上司のコメント
刺激の少ない船内において楽しそうに計画する様子を微笑ましく思ってました。 しかしながら朝、船橋から覗いてみると見当違いの方向で準備する一行が、、、 天測計算を全員に課すことで無罪放免としました。
上司のコメント
2隻目とは思えないほどガチガチだった彼。とはいえ三等航海士としての基礎は持っていたため安心してみることができました。しばらくすると雰囲気にも慣れ、最後には船内のムードメーカーになってくれ、皆良い雰囲気のもと業務にあたることができておりました。彼の明るさにはとても感謝しています。