INTERVIEW
陸上で学べば学ぶほど、
航海士の仕事は楽しくなる。
海上職
T.F
船長
2003年入社
商船システム工学部 卒
約30名のクルーをまとめ、
操船指揮を取る船長。
現在はどのような仕事をされていますか?
狭い水道や入港、出港のときに自ら操船指揮をとるのが、船長としての大きな仕事です。ただ、いつもデリケートな操船が必要な場面ばかりではありません。見晴らしの利く広い海を航行しているときなどは、見張りや操船を部下の航海士に任せます。私自身は輸送契約の詳細を把握しつつ、船舶の安全運航、船体や機器のメンテナンス、乗組員約30名の生活環境の維持など各方面に気を配り、担当船の司令塔として動きます。
長い航海の期間中、さまざまな課題に直面します。嵐に遭遇することもあれば、機器が故障することもあります。皆でアイデアを出し合いながら難題の数々を乗り越え、輸送契約で設定された条件通りに貨物の安全輸送を達成できたときはとても嬉しく感じます。
船上で抱いた疑問の数々。
海運営業で、その答え合わせができた。
キャリアの転機となった出来事は何ですか?
キャリアを通して大きな転機となったのが、海運営業の仕事でした。それまでの3年間は航海士として働いてきましたが、仕事をものにできた感覚はありませんでした。結局のところ、各作業の「目的」がいまいちよくわかっていなかったからです。疑問を抱えたまま作業をこなしていたので、やりがいを感じるまで至らずくすぶっていました。
そんな私にとって、営業職の仕事は目からうろこの連続でした。特に、船上における多くの作業が、契約内容にひもづいて行われているということを、肌で理解できたことが大きかった。例えば用船契約では、船のパフォーマンス能力を保証する必要があります。そこで、スピードや燃料消費量などを事細かに記録した「アブログ」という日誌を、船主や用船者に提出します。航海士のときは、港につくたびにアブログを作成するのが大変で、苦手意識しかありませんでした。でも顧客と向き合う営業視点では、この数値の一つ一つが非常に重要なわけです。
決められた日時までに入港し、決められた数量の貨物を積む。決められた時間内に給油を完了する。すべて契約で定められています。船上で抱いていた「この作業はなんのために?」という疑問の数々がどんどん解消されていくのが、本当に嬉しかったです。海運営業の経験は、私にとってかけがえのない財産になりました。
シンガポールでは、
グローバル感覚を習得。
その後のキャリアで、印象に残っていることは?
入社7年目にはイイノシンガポールに着任。それまでは船を借りて貸し出す用船契約が中心でしたが、今度は借りてきたケミカル船を自主運航する形態で、オペレーション業務を担当しました。船に対して直接指示を出す立場を経験し、船長がいかに対外的な仕事をしているかがわかりました。また、初めて外国人スタッフと水平の関係で協働したことも、財産になりました。海上職だったときは、外国人クルーとは縦の関係で指示を出していましたが、ここではそうした接し方が通用しません。パートナーとして相手を尊重しながら共通の目的に向かって働くという、ある意味正しいグローバル感覚が身につきました。 その後、一度目の海上復帰をしたときも、船舶管理会社でメジャーインスペクション業務を経て二度目の海上復帰をしたときも、航海士の仕事がとても楽しく感じられました。新人の頃には不足していた目的意識やコミュニケーション力をもって業務に取り組めたからです。今は船長という重責を担い、別の面での大変さはありますが、やりがいと誇りをもって働けています。
自分自身をアップデートしつづければ、
どの部署でもやりがいが得られる。
これからの目標を教えてください。
今は船長として、船のタイプ・航路・規則・乗組員の国籍等の条件が多様に変化しても、一定のパフォーマンスが発揮できるようになりたいと思っています。それには、操船はもちろん、船舶自体にもよりいっそう精通することが必要です。混乗船が増えているので、英語でのコミュニケーション能力を磨き、クルー全員のことを理解することも大事です。技術、知識、マネジメント力、それから価値観も含めて自分自身をアップデートしていきたいと考えています。入社以降、さまざまな部署を経験してきましたが、どの部門でも学びの機会が多く、やりがいをもって取り組んできました。今後についても、どんな景色が見られるのか、とてもワクワクしています。